| 2004年06月03日(木) |
『タンスヨウゴミヨウカン』 |
先日、2日間かけてタマコのことを書いた。 ラーさんがアルバイトの高校生に見せたところ、大受けだったらしい。 しかし一番受けていたのは当の本人、タマコだったということだ。 そのくせ、「何これ、そのまんま書いとうだけやん」と言ってうそぶいていたそうだ。
さて、今日タマコは、午後6時から8時までの2時間勤務だった。 タマコを書いた日から、ぼくはタマコに会ってないので、今日は4日ぶりの顔合わせとなった。 タマコはぼくの顔を見るなり、逃げた。 「おまえ、何で逃げよるんか?」 「またいろいろと書くでしょう」 「おまえがまともになったら書かん」 「私はまともです」 「どこがまともか!」 「ねえ、どうしてタマコなんですか?私は珠○なのに」 「タマコで充分たい」 その後もタマコは逃げ回って、なかなか隙を見せようとはしなかった。
ところが7時過ぎた頃だったか、タマコがヘラヘラ笑ってぼくの売場にやってきた。 「ねえ、しんたさん」 「何か?」 「小学生のタンスヨウゴミヨウカンってありますか」 「タンスヨウゴミヨウカン?何するものか?」 「いや、お客さんから電話なんですよぉ」 「それを先に言え!待たせとるんか?」 「はあ」 「じゃあ、『調べまして、こちらから折り返し電話します』と言っていったん切れ。あ、名前と電話番号をちゃんと聞いとけよ」
『さて、小学生用のタンスゴミヨウカンとは何だろう?』 こんなことを考えているところに、電話を終えたタマコがやってきた。 「わかりましたかあ?」 「わからん。何する物なんかのう?」 「もしかしたら、タンスのゴミをまとめて捨てる缶かもしれませんよ」 「そんなのがあるんか?」 「さあ?」 「知らんなら言うな!『学校の引き出し』というのがあるけど、その類のものかのう?」 「あ!」 「何か?」 「羊羹ですよ」 「え?」 「タンスヨウゴミという羊羹ですよ」 「そんなのあるか!それなら食品に電話するやろう。もういい、取引先に聞いてみる」
[あ、もしもし、しんたですが] [お世話になっています] [ねえ、タンスヨウゴミヨウカンち知っとう?] [何ですか、それ] [わからんけ、聞きよるんやないね] [さあ、知らんですねえ。聞いたこともない]
やはり駄目か。 こうなったら、恥を忍んでお客さんに聞くしかない。 「タマコ、さっきのメモ」 「はい。これです」
[もしもし、○○店ですが、お世話になっています] [はい] [先ほど電話頂いたそうなんですが、よくわからなかったので電話差し上げたんですけど…] [ええ!?あのですねえ…。知りませんかねえ、小学生用の『算数用5ミリ方眼紙』] [ああ、方眼紙ですか] やっとわかった。
『タンスヨウゴミヨウカン』は、タマコの聞き違いだったのだ。 当のタマコ、聞き違いとわかるや、「あー、違(ちご)たー」と言って、頭を抱えて逃げて行った。 電話が終わった後、ぼくがタマコを探しに行くと、タマコは商品の陰に隠れていた。 「コラー!何が『タンスヨウゴミヨウカン』か!おまえはどういう耳をしとるんか!?」 「だって、そう聞こえたんですよぉ」 「おまえは、電話番もしきらんとか!?」 ぼくはタマコにさんざん文句を言った。
そしてその後、思うところがあって彼女を日用品の売場に連れて行った。 そこには急須が置いてあった。 ぼくはその急須を指さして、「おい、これは何か?言うてみ」と言った。 タマコは「そのくらい知ってますよ。『湯飲み』でしょ」と自信ありげに答えた。 「これが湯飲みかっ!」 「ええっ、違うんですかっ!?自信あったのになあ」
次に傘の売場に連れて行った。 ぼくは傘の柄を指さし、「じゃあ、これは?」と聞いた。 「これは、『カサモチ』です」 ・・・、勘弁してほしい。
タマコは今21歳。幼稚園の先生を目指している。
|