| 2004年06月01日(火) |
頑張るタマコ!21歳(下) |
まず手始めに、基本的なことからというので、メモ用紙に九州地図を描き、そこに県名を入れさせることにした。 「おい、ここが福岡県。じゃあ、ここは何県か?」 と、福岡の左横を指さした。 「わかりますよ、そのくらい。佐賀でしょ」 「お、わかるやないか。じゃあ、ここは?」 「バカにしないで下さい。長崎じゃないですか」 「じゃあ、ここは?」 と、ぼくは福岡の右下を指さした。 「こういうのは得意なんです。そこはですねえ、岡山県です」 ぼくは笑うのを必死に堪え、「じゃあ、ここは?」と、その下を指さした。 「岡山の南だから…、ああ、広島県です」
それを見ていたラーさんが、長崎の左横に彼女の出身地である五島列島を描き加えて、「タマコちゃん、ここは?」と聞いた。 タマコはいかにも自信ありげに、「そこは、島根県です」と答えた。 ラーさんは腹を抱えて笑い出した。 「おまえ、知っとる県名を並べよるだけやないか。ちゃんと勉強してこい」 と、ぼくは売場に戻った。
それから一時して、「しんたさん、わかりましたよ」とタマコがやってきた。 手に先ほどのメモ用紙を持っている。 それを見ると、そこには正しい県名が書かれていた。 「ちゃんと自分で考えたんか?」 「当たり前じゃないですか。任せて下さい」 ところがよく見ると、その県名、所々ひらがなで書かれている。 そこでぼくが「おまえは『大分』という漢字も書ききらんとか?」と聞いくと、タマコは「ちゃんと書けますよ」と言う。 「じゃあ、書いてみろ」 さすがタマコである。 期待通り書いてくれましたわい。 【大痛】 「じゃあ、鹿児島はどう書くんか?」と聞くと、【鹿ご鳥】と書く。 「おまえは、漢字から勉強せないけんのう」
最後にこの質問をしてみた。 「おまえは都道府県というのを知っとるか?」 「知ってますよ、そのくらい」 「じゃあ、東京は東京何と言うんか?」 「東京県」 「東京けん?ラーメン屋やないんぞ。じゃあ大阪は?」 「大阪県」 「北海道は?」 「北海道県」
さすがにバカボン似である。 これでは幼稚園の先生どころではない。 もし今タマコが幼稚園の先生になったら、「浴衣着てお祭りに行ったんやけど、その時下駄のタビが切れて困ったっちゃね」とか、「この間、東京県に行った時、ナンパされたんよ。『田舎どこ?』と聞かれたけ、『福岡県。岡山県の上の』と教えてやったっちゃ」とかいう会話が、タマコの教え子の間で、まかり通るようになってしまう。 「おまえねえ、幼稚園の先生になる前に、園児からやり直せ」とぼくが言うと、バカボン似のタマコは、人ごとのような顔をして、口をぽかーんと開けていた。
タマコは今21歳。幼稚園の先生を目指している。
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