『夜汽車』
風よ、ぼくはもうすぐ行くよ 君のもとへ走る夜汽車に乗って はやる気持ちを抑えながら 目を閉じて朝を待つよ
まどろむ星は夜を映す 遠くに浮かぶ街の灯り ふと君の影を窓に見つけ ぼくは慌てて目を閉じる
暑い、暑い夜汽車よ ぼくを、ぼくを乗せて 西へ、西へ向かう 君の、君の元へ
風よ、ぼくはもうすぐ行くよ 眠れぬ夜を窓にもたれて 君のもとへ走る夜汽車よ 夜が明ければ君のもとへ
今日、プレイヤーズ王国に、『夜汽車』という歌を登録した。 歌詞は、上のとおりである。 これを作ったのは21歳の時だったから、もう25年が経つ。 と、プレイヤーズ王国で書いた『ショートホープ・ブルース』のコメントと同じことを書いたが、実際には『ショートホープ・ブルース』とは10ヶ月くらいの開きがある。 『ショートホープ・ブルース』を作ったのは1978年の晩秋で、この『夜汽車』を作ったのは1979年の初秋だった。 その頃、ぼくは東京にいたのだが、嫌なことばかりが起きていた。 下宿にダニが大発生し背中中を噛まれた事件があり、それから時を置かずして胃けいれんに襲われた。 胃けいれんは1週間続いた。 そのために、アルバイトを休まなければならなくなり、挙げ句の果てにクビになってしまった。 歌舞伎町のパチンコ屋で、置き引きにあったのもこの頃である。 また、後に『西から風が吹いてきたら』のネタ源である一連のN美騒動は、この頃から始まっている。 とにかく嫌なことばかりが続いていた。
そのせいで、望郷の念が強まっていった。 しかしその念は、「東京が嫌いだ」とか「福岡が好きだ」とかで強まっていったわけではなかった。 『西から風が吹いてきたら』の中で、「東京が嫌いだ」というようなことを書いているが、実はそうではなかった。 偶然そういう事件が重なったために居づらくなっただけで、基本的にぼくは東京の水が合っていた。 東京は、実に路地が多いところである。 ぼくの下宿も、路地に面したところにあった。 ぼくは、なぜかそういうところが落ち着くのだ。 言い換えれば、一歩奥に入ればどこも下町という、東京の街の雰囲気が好きだったということになるだろう。
では、なぜ望郷の念が強くなったのかと言えば、今思えば、当時好きだった子への未練からだった。 他に考えられないのだ。 いったんは諦めたつもりだったが、やはり諦めきれない。 故郷を遠く離れたことが、さらにその人の想いを強くしていった。 そして、数々の歌や詩になった。 『夜汽車』も、そういう歌の一つである。
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