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2003年12月11日(木) うちの女

ぼくは他人に妻のことを話す時、「うちの嫁さんが…」と言っている。
妻の呼び名、これは人それぞれで違うようだ。
「かあちゃん」と言っている人もいるし、「家内」と言っている人もいる。
また、「かみさん」などと言う人もいる。

高校時代、政治経済の先生は気取って「ワイフ」と言っていた。
そのことをある生徒が、「どうして先生は奥さんのことを『ワイフ』というのですか?」と突っ込んだことがある。
すると先生は、「ぼくは『ワイフ』なんて言ってますかねえ。ぜんぜん気がつかなかった」と、真っ赤な顔をして弁解していた。
その後、その先生が奥さんのことを何と言うかと注目していたのだが、相変わらず「ワイフ」と言っていた。

お客さんの中に、時々「うちの女」という人がいる。
あれはいったいどういう感覚なのだろう。
初めてその言葉を聞いた時は、一瞬戸惑ってしまった。
確かに「女」には違いないが、妻だけが「女」ではない。
母親だって、姉だって、妹だって、娘だって、さらに浮気相手だって、みな「女」である。
ぼくは、最初「いったい誰のことを言っているのだろう」と思ったものだ。
話を聞いていくうちに、その「うちの女」がその人の妻だということがわかったので、「そうですか。奥さんは…」と返したが、もしその「女」が浮気相手のことだとしたら、その人は「奥さん」と言われたことに対して、どういう反応をしていただろうか。
まあ、ぼくを前にして「妻」など言うのが照れくさかったから、「うちの女」となったのだろう。

ところで、ぼくの妻は他人にぼくのことを話す時、「うちの旦那が…」と言っているそうだ。
「旦那」、ちょっと抵抗のある言葉である。
よく時代劇などで、ゴザを持った夜鷹が「旦那」と声をかけている場面がある。
鼻の下を伸ばした、その「旦那」と闇の中に消えていく。
「旦那」といえば、まずその場面を思い浮かべてしまう。
あまりいい印象を持っていない。
そういえば、焼津の半次も花山大吉のことを「旦那」と言って、追いかけていたなあ。
いずれにしても、古くさい言葉である。
もう少し気の利いた言葉で言ってほしいものだ。


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