その頃から、「朝シャン」という言葉が流行りだした。 その言葉に乗ったわけではないが、ぼくは朝と夜、毎日二度頭を洗うようになった。 理由は痒みではない。 臭みである。 何となく頭が臭いような気がするのだ。 今考えると、夜洗った頭が朝臭くなるわけがないのだから、その当時ちょっとした神経症に陥っていたのかもしれない。 とにかくそれから何年間か、その状態が続いた。
ところがそのせいで、余計な副産物を生む結果となった。 副産物、それは白髪である。 ぼくは元々髪質が堅いためか、社会に出た頃から若干の白髪があった。 しかし、そう目立つほどもなかった。 その数が急に増えたのは、朝シャン時代だった。 当時は、「毎日頭を清潔にしているのに、何で白髪が増えるのだろう? もしかしたら、まだまだ洗い方が足らんのかもしれん」と思いせっせとシャンプーを繰り返していた。 シャンプーが髪の健康に悪いと知ったのは、30代後半である。 自分勝手な思い込みが、白髪進度を加速させていったと言えるだろう。 その結果、20代後半でブラックジャック状態になり、若い子から「白髪じじい」などとあだ名されるようになってしまった。
髪の健康について考えるようになったのは、30代後半からだった。 ある人から、「頭は石鹸で洗った方がいいよ」と言われたことによる。 その人はぼくより年上だったが、髪が黒々として、しかもツヤがあった。 その当時のぼくはと言えば、すでに黒髪よりも白髪のほうが多くなっており、枝毛も多く、ツヤもなく、健康とはほど遠い髪の状態だった。 そこで、その人から言われたとおり、石鹸で頭を洗ってみた。 ところが、石鹸で洗うと髪がギシギシし、指が通らない。 「これは石鹸のせいか」と思い、石鹸について勉強することとなった。 いろいろ文献を読みあさったあげく、行き着いたのが『シャボン玉石けん』だった。
それ以降、ずっと『シャボン玉石けん』を使っている。 おかげで、白髪は相変わらずだが、髪にはツヤが戻り、枝毛もなくなった。 しかし、石鹸で頭を洗うと、問題がなくはない。 それは、「石鹸カス」である。 頭を洗った後、しばらくして頭を触ると、白いカスが落ちてくる。 最初はフケかと思っていたが、ものの本を読むと、どうやらそれは「石鹸カス」だということがわかった。 それを防ぐには二度洗いしないとならない、と書いていた。 物臭なぼくにとって、二度洗いは面倒である。 しかし、客商売をやっているため、フケが落ちて不潔だというイメージをお客に与えるわけにはいかない。 そこで渋々二度洗いを決行している。 ということで、中学の頃まったく洗わなかった髪は、3日に一度、2日に一度、1日二度という時代を得て、今は2日に一度(しかも二度洗い)時代である。
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