2002年07月24日(水) |
アルバイト遍歴 その4 |
○運輸をクビになってから数日して、ぼくはまた北九州に戻った。 ま、ただの夏休みであるが。 7月中旬に戻ったぼくは、春にアルバイトをした運送会社にコンタクトを取った。 来てくれ、と言うことだった。 さっそく翌日からアルバイトを再開した。 仕事は、春と同じく宅配の仕事だった。 東京で鍛えてきてあるので、荷物はかなり軽く感じた。 調子に乗って、山の中腹にある家まで、洗濯機を一人で抱えて行ったこともある。 毎週火曜日が指定休だったのだが、ぼくは休まずに仕事に行った。 「あんた今日休みやろ?」 「そうなんですけど、何でもいいから仕事をさせて下さい」 「今日は宅配休みやけ、他にすることといえば・・・」 と、あてがわれた仕事は、土方だった。 社長宅の、100坪ほどある庭の整地である。 ブルトーザーでそこにあるコンクリや石を砕き、その後スコップで地面を平らにしていくのだ。 それまで、本格的にスコップを持った仕事はしたことがなかった。 慣れない仕事、しかも炎天下である。 終わった時には、かなりバテていた。 帰りしなに、「どうね、しんた君。来週の火曜日もするかね」と聞かれた。 『こりゃ、休まんとやっとられん』と思ったぼくは、「遠慮しときます」と言った。 その言葉どおり、翌週から火曜日はきちんと休むことにした。
休みもとらずに何で頑張ったかというと、ぼくはひとつの目的があったのだ。 実は東京に出る前に、ぼくはテレビでポール・マッカートニーのオーストラリア公演を見たのだが、そのライブで弾いていたギターを痛く気に入っていた。 そのギターとは、『オベーション・グレンキャンベルモデル』だった。 このギターは当時24万円した。 いつかこのギターを手に入れたいと思っていたのだが、東京では生活に追われて、そんな高価なものを買う余裕などなかった。 休みを取らずに働いた理由というのは、東京のアルバイトで稼いだお金と、このアルバイトのお金を足せば何とかなると踏んだぼくの、当然の行動だった。 しかし、それも一週間で挫折してしまった。
ところが、休みの日に福岡天神に遊びに行ったの時に、とんでもない裏技があるのを発見した。 クレジットである。 もちろんそれまでにも、クレジットの存在があるのは知っていたが、そこまでクレジットの必要性を感じたことはなかった。 バイトを終えて東京に戻る時に、ぼくは福岡天神のB電気に行ってクレジットの手続きをした。 そこからぼくのクレジット人生が始まった。 だけどこの時、もし払いが遅れたら、二度とクレジットは使えない、というのを知った。 だから無理のない支払方法をとった。 これが社会に出てから、大いに役に立つことになる。 これは自慢するようなことではないが、ぼくはこれまでかなりのクレジットを組んできた。 しかし、支払いが遅れたことは一度もない。 それは、そのギターを買った時にクレジットについて教わったことが大いに役に立っている。
その翌日、ぼくはオベーションの大きなケースを持って、飛行機に乗った。
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