トイレ(個室)に入っていると、突然携帯電話が鳴り出した。 幸いトイレにはぼくしかいなかったので電話を取ったが、それでも声を落として話した。 実際この場面、他の人ならどういう対応をするんだろうか? 入室前にバイブとかマナーモードにしているんだろうか? 鳴ったと同時に、切ボタンを押すんだろうか? それとも、普通に電話に出て、大胆に話すんだろうか?
ところで、携帯の着信音は、人それぞれに個性が出ているので、それが鳴ればすぐに誰だかわかってしまう。 ぼくの場合は“電波少年”にしている。 もし今日みたいな場面で知っている人がトイレをしていたら、「ほう、今しんたが入っているのか」とすぐにわかってしまう。 それがもし意地の悪い人だったら、ぼくに「ちゃんとお尻拭いてきたか?」などと言いかねないだろう。
トイレに関しては、過去にいろいろ事件があった。 一番多かったのは、トイレの電気を消されたことだ。 心地よく座っていると、突然真っ暗になる。これほど不安で情けなくなることはない。 前にいた店で、よくこの被害にあっていた。 入口に“節約のため、使用後は電気を消しましょう”と書いていたため、みんな自分の使用後に電気を消すくせがついてしまっていた。 男子トイレの場合、個室の扉が閉まっていることはめったにないので、たまに閉まっていても、つい見逃してしまうのだ。 「おーい」と叫んでも、その人はもう立ち去ってしまっている。 今なら携帯電話を持っているので、外部と連絡を取れば何とかなるのだが、以前はそんな手段はなかった。 そんな時どうしたかというと、とりあえず納得いくまで拭きあげ、耳を澄まし、誰も来てないことを確認してから、おもむろに立ち上がり、中途半端にパンツをあげ、鍵を開け、ダッシュで電気をつけに行く。この時、がに股で走ることが肝要であることは言うまでもない。 その後、再び個室に戻り、最後の仕上げをするのだ。
次に多いのが、紙事件である。 ひととおりの作業をして、さて仕上げ、という時に紙がないことに気づく。 これはショックだ。 この場合は、冷静にならないと事は解決しない。 焦ったら大変なことになるだろう。 まず、周りを見渡して、利用できるものはないかよく確かめる。 それで対処できない場合は、所持品をチェックする。紙系を持っていたらしめたものである。その意味でも、手帳というのは必需品だというのがよくわかる。 もし紙系を持ってなかったら・・・ ・・・よく手を洗おう。
他にも、個室に入って「さて今から始めよう♪」という時に、掃除のおばちゃんが入ってきて、掃除を始めた。とか、中途半端な状態で鍵をかけていて、他の人が開けた ― この場合、不思議とおたがいに目を合わせ笑顔になる ― とかいろいろな事件に巻き込まれた。 これから先も、また新たなトイレ事件は起こるだろう。 これは、生きてく上で決して避けては通れない、人間の宿命である。
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