行人徒然

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2004年07月22日(木)

 今日も朝からいい天気。ダッシュでチャリを走らせてると、酒屋の前で障害物発見・・・・落ちた鳥の雛だった。道の端っこなら放置プレイだけど、けっこう真ん中に近くて車も走りにくそうだったから、とりあえず道の端に移してあげる事に。
 親鳥が木の上でぎゃあぎゃあ鳴いてたのに、あたしが雛を手にするとぴたりと鳴き止んだ。こぶし台くらいの、ちょっと大きな雛は、餌ももらえなかったのか、それとも暑いからか。息絶え絶えの様子。鳴こうとしているのだろうが、開いたくちばしと上下する喉の動きだけで、その事実がわかるくらい衰弱していた。
 でも、家につれて帰ってあげる時間も、見上げる木上にあるであろう巣を探してそこに返してあげる時間もなかった。だから、巣があるの家のガレージすみに、その雛をそっと置いた。そこは雛が落ちたであろう木の根元でもあった。
 置いたとたん、親鳥が急に鳴きはじめる。
 でも、時間がなかった。
 その家は普段から人がすんでるのかどうかわからないようない家だったから、本当は向かいの酒屋さんに置くのがよかったかもしれない。でも、酒屋さんの前は日照のタイルだった。家に帰るとき、雛をまた見ようと思って、とりあえずその場をあとにした。
 夕飯は京さんと焼肉。何故か今日は休みじゃないそうなので、たらふく食ったがその途中でもちらちらあの鳥が頭を過る。生きてればいいんだけど。そしたら、つれてかえって米粒とミルクをやるんだけど。
 普段、わりと物忘れがちな自分だったが今回はちゃんと覚えていた。22時を回った帰り際、自販機の明かりで雛を置いた場所を見ると、そこには目を閉じて長く横たわる雛の死体があった。変わり果てた、と言うようには見えなかったが、あの丸くてむくむくした体が横たわると、こんなに長く大きくなるのかとちょっとビックリした。
 哀れだな。そう思った。こういうのが「もののあはれ」というのではないかと思った。
 それから家に帰って、新聞紙とシャベル、懐中電灯を持って引き返す。どう言う事であれ、朝、目にとまり、手に取ったのも縁だ。最後まで面倒を見てやらないとけいない。
 そう思って家につれて帰り、庭に埋めてやろうと思ったところ・・・・懐中電灯の先、縁台の上で、ボスが夕涼みしてやがった。なにぃ?どうしてここにボスが!しかし、屋外で見るボスには寛容なので放置。庭先を掘ろうとしたが、懐中電灯の先に惚れそうな場所はない。昼間だったら、あの植込みの奥に埋めてやれるのに。
 仕方ないので、駐車場の横、オシロイバナの脇に埋めてやった。ここはすぐ横を車に乗るために人が何度も通るせわしない場所だけど、道端で朽ちて腐るよりは、土の中にいたほうが落ち着くと思って。

 家に入るとき、ボスにご機嫌伺いをしたが、もういなくなっていた。
 オシロイバナのそば、カボスの木にセミの抜け殻があった。
 あたしは汗をぬぐうと、空を仰いだ。




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