行人徒然

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ネギくん(仮名)
2002年01月29日(火)

 手紙がきた。ネギくん。昔、一番最初に付き合っていた人で、何故か何年も経っていない今でもあたしと付き合っていると思い込んでいる人。昨年の今ごろ、よくわからない手紙を送ってきた人。たぶん『俺達付き合ってるかな?付き合ってないならちゃんと付き合おう』みたいな感じだったけど。
 こういう書き方をすると、お前何様?って言われそうだけど、あたしはネギくんのことを一度も好きになった事がない。付き合い出した時に
『あたし、あなたの事好きじゃないけど、それでいい?』
ってちゃんと聞いた。いいって言われたから付き合った。そのうち好きになるかなって思ったけど、ぜんぜん好きにならなくて、結局ネギくんの気持ちが重くなった。
 キスしたら。抱きしめてもらったら。セックスしたら好きになるかなって思ったけど、何をしてもだめだった。
 好きになろうと努力してたけど、努力している段階でもうだめだったのかも。

 確かに夜中に電話してわがまま言っても、ちゃんと聞いてくれる。そういう事も許してくれるのはネギくんだけだけど、それは別にそういう事を許してくれるのがネギくんだけだっただけで、別に他にも許してくれれば誰でもよかった。

 いっしょに旅行に行きたい。それはもう何年も前から夢見ていた事だ。

 そう手紙には書いてあった。

 ネギくんはあたしの事を「あてぎ」と呼び捨てる。あたしはそれが本当はたまらなく嫌で仕方なかった。でも、好きになれないネギくんへのせめてものお返しだと思ってた。

 あてぎといっしょに旅行に行きたい。付き合い出した頃から、ずっと思っていた。


 手紙にはそう書いてあって、あたしは吐き気がした。
 ストーカーの様だと思った。
 もう何年あってないというんだろう。
 電話だって一年に一回あるかないかで。


 思いあがってるとか思われてもいいけど、もう嫌だった。結局自分がいい子でいたかっただけなのかとも思ったけど、もう電話をするのも嫌になった。
 返事を書いた。


 はっきり言えば、あたしはあなたと最初から付き合っていると言う気持ちはなかった。好きになったこともなくて、好きになろうと努力したけどダメだった。
 今までいろいろな事をしてもらったけど、それが重荷になっていて、応えられない自分が嫌だった。
 友人の時は楽しい思い出がたくさんあったのに、付き合い出してからは嫌なところばかり見えて、嫌な思い出しかない。
 頼ってくれといわれても頼れなかった理由は、今では自分がよくわかる。
 友人としてなら付き合いなおせるかもしれないけど、それ以上はもうダメだと思う。もし友人として付き合いなおせるなら、その時は「あてぎ」ではなくて、あの時と同じ仇名で呼んでほしい。


 そんな事を書いて、返事を出した。


 別に向うから返事をもらおうと言う気はない。電話がきてもたぶん取らないだろう。
 ネギくん。
 あなたに言ってないことはたくさんあるよ。
 あなたがあたしと『付き合って』いると信じてた時間。あたしは違う人と付き合ってたりもしたんだよ。
 あなたはよく、あたしに言ってたよね。
「あてぎは俺の全て」
 でも、あたしにとってあなたはどうでもいい、交換のできる、いわばアクセサリーみたいなものだった。
「あたしはネギくんが全てじゃないよ」
 そういったら悲しそうな顔したよね。あたしもそんな事、好きな人に言われたら悲しいよ。でも、あなたには言えた。好きじゃないから。


 あたしはもう何年もオタク同人女だから、こういう事は全部ネタになっちゃう。それもなんかあなたに悪かった。
 こういう考えが出きる分、あたしは少しはあなたが好きだったかもしれないけど、もう好きじゃないよ。
 なんなら、もらった指輪も返すよ。指輪に罪はないけどね。返してもはめる指なんてないから捨てないといけないでしょ?だったらあたしの指にはめてたほうが指輪は嬉しいと思うんじゃないかな。なんでもいいけど。


 あたしはあんたの気持ちは考えた事がない。


 それがわかってくれればいい。
 そして、もうあたしの事なんか忘れてほしい。
 あんたあんなに優しいんだから。
 自分の気持ち殺してでも相手に尽くせるんだから。
 だから、もし最後にもう一度思いあがらせてくれるなら。


 好きならもう忘れて。



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