行人徒然

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2002年01月21日(月)

 今までいくつかの多肉植物やサボテンを「飼って」きた事がある自分だが、今回悲しい事が起こったので、それを書いておこう。
 ちなみにどう言うわけか自分や祖父にとって植物は「飼う」ものらしい。動物と同じなんだろうね、きっと。成長を見守っちゃうわけだ。
 ついでに言えば名前がついていて、全部『アラシヤマ』なのだが、これについてはとくに突っ込まない様に。「南国少年パプワくん」がヒントですね。
 で、この『アラシヤマ』なんだけど。

 去年の春。インフルエンザで会社休んで母親に病院連れていってもらった帰り、サボテンの寄せ鉢を買ったんだよ。5月か6月の日記で『ごめんねアラシヤマ』って言うのがあるんだけど、その時の鉢なんだ。
 で、あたしがそれを買ったのは多肉植物が好きなヤツだった事と、一緒に植わっていたサボテンの片方にオレンジの花が咲いていたから。多肉植物のアラシヤマは『ごめんねアラシヤマ』で書いたけど、天に召された。その後、緑色の濃くて背の高いアラシヤマは、まるで踊っているように片方から二本の腕を出した。そして、花が咲いているアラシヤマは。

 買った時から、少し頭のてっぺんの方がしぼみかけだったけど、それは水遣りがお店で足りないせいだと思ってた。だから、一週間に2〜3回、霧吹きでずっとお水を上げていた。
 いつまでたっても花はそれ以上開きも萎みも枯れもしなかったけど、サボテンの花って見た事ないからそう言うもんだと思ってた。

 金曜日。

 アラシヤマの根元が黒ずんでいるのに気がついた。腐ってる色だ。もう何週間も前から、体中がぶよぶよして萎んでいる感じだった。だから、きっと根元が痛んでいるんだと思った。もしかしたらコイツだけ水を多めにあげてたもんだから、うっかり根腐れたのかと思った。
 それなら、上の方だけ切って乾かしてやれば、新しい鉢でアラシヤマは元気になってくれると思った。だから、思いきってカッターで切った。それなのに。

 ものすごいショックだった。サボテンはクラシックが好きだって聞いてたから、週に一回は一緒にクラシックのCD聞いてたのに。
 修二がいなくなってから、いろいろな愚痴を聞いてくれたのに。

 アラシヤマの体の中は、茶色く腐ってた。

 頭の方を見た。腐って臭いまでするどろどろの中に、何か刺さってた。触って動かすと、アラシヤマの花が一緒に揺れた。まさかと思って花を引っ張ってみたら、花は造花だった。
 今までそんな気も少しはしていたのだ。でも、普通造花なんて植物に刺さないだろうって思ってた。でも、アラシヤマはずっと頭に造花を刺していた。あたしはそれに気付かないで、アラシヤマを殺してしまった。
 アラシヤマは、買った時から頭が少し萎んでいた。つまり、買った時からアラシヤマは「痛い!」と訴えていたのだ。時々触っていた花。かさかさして、ドライフラワーの様だった。それはそう言う花なんだと思っていたけど、造花だったからだった。刺さった造花に触られた時、こいつはどんな思いがしたのだろう。
 そう言えば、こいつはよく自分の指にとげを刺してきた。本当は触ってほしくなかったのかもしれない。それとも頭に大きな『棘』が刺さっていると伝えたかったのだろうか。
 外側、ほんの1ミリくらい、アラシヤマの頭は緑色だった。でも、水で内側をそっと洗いながしたらぼろぼろになっていた。
 どうしていいかわからなくなって、少しパニックに陥りながらあたしはアラシヤマの根っこの方まで掘り返し、その土とアラシヤマの体と、そこに刺さっていた造花をちり紙に包んだ。そして、気づいたらそれをゴミ箱に入れていた。
 うめてあげればいいのに、その時はそうしなければ行けないと思ったのだ。
 そして、今日はゴミの日だ。アラシヤマは傷ついた体と、そこにずっと刺さっていた棘と一緒に、生ゴミや紙くずと友にどこかに運ばれているだろう。それはまるで自分の死に様の様で、なんだか少し自嘲した。



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