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きゅっ。
by きゅっ。
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■もうすぐ県中学総体
 通信陸上新潟県大会では決勝8位に終わってしまった女子リレーチーム。

 この大会で3位以内であれば、北信越大会に出場することができたのだったが、それは不可能となってしまった。確実に3位には入ると思っていたのだが・・・。

 現在のリレーメンバー、最初から皆が速かったわけではない。中学一年生時点では15秒台という子もいたくらいだ。それを顧問の先生の熱心な指導のお陰でここまで育ってきたのだった。

 エースに成長したアスミちゃんは、郡市大会で100メートル、200メートル、400メートルリレーの3冠を達成し最優秀選手に選ばれた。アスミちゃんとエースの座を争うマアサちゃんは今季から100mハードルを始めたばかりというのに、先日の通信県大会では優勝してしまった。昨年のエースだったマユミちゃんは今季は不調ではあるが、徐々に回復傾向にある。マユミちゃんの場合、左右の脚の長さが数センチ違うというハンデを克服してきていた。レギュラー4人中、唯一の2年生のマホちゃんは大会ごとにコンマ1秒単位で記録が伸びてきている。

 顧問の先生は、実は私が小学1年のときの6年生である。中学・高校時代は、新潟県の陸上競技中距離界のエース。たしか高校3年次のインターハイ1500メートルで入賞している。その後、順天堂大学に進学し箱根も走った。同年代の陸上競技をやっていた人には馴染みがあると思う。
 現在は県央に家があるので、普通は魚沼地域に赴任することはない。ところが、別の魚沼地域の中学校への異動を打診された際、それならと、自身の母校へ希望を出した。

 現在、中学校の部活動は縮小傾向にあり、土日に活動をするにはスポーツ少年団活動という位置付けをしないといけない。そこで先生は、たった一人で陸上スポーツ少年団を立ち上げてしまった。土日は一人で指導をし、朝練習を続け、冬季合宿も行った。そんな先生の熱心な指導により、陸上部は全体的に力をつけていった。

 そんな中、個人の記録をもっとも伸ばしていったのが、アスミちゃんだった。
 彼女は中一時点でそれほど速い選手ではなかった。

 その彼女もいまや陸上部のエースである。通信陸上県大会では決勝に残るほどの力もつけた。また、アスミちゃんのお母さんは成長する我が子の姿を、全大会、全記録会、ビデオカメラを片手に追い続けた。大会ごとに記録が伸びるのである。観戦のしがいもあったことだろう。

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 マリがいうには、アスミちゃんこそが北海道全中のリレーを走ることを最も熱望していたということである。

 ところが、共通の目標を持っているはずの先生とアスミちゃんの間で何かが噛み合わなくなっていった。

 まず、最初の衝突は、記録会の個人種目のエントリーに現れた。

 アスミちゃんは、自身の100メートル競技にこだわりをもっていたのに、先生が100メートルにエントリーしなかったのである。記録会では、各校の種目別エントリー数が決まっていて、全員が希望する種目に出場できるとは限らない。通常、力を持っている選手から希望が通る。アスミちゃんの場合、エースであるので、自分の希望する種目には優先される。ところが、先生は、リレーを最優先しており、エースを温存したかったのだと思う。どちらかというと不得意な200メートルにアスミちゃんをエントリーした。

 そして、このときを境に、先生の叱咤激励がアスミちゃんにとっては言葉の暴力と受け取られるようになったらしい。伸びる記録に反比例するように歯車が狂い始めたのであった。

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 『アスミの気持ちなんか分らないし、理解しようとも思わない。』

 マアサちゃんは、他のチームメンバーに言った。

 県大会を来週に控え、女子チームはミーティングをしていた。マアサちゃん以外は、過去に幾度かの挫折経験があった。怪我であったり、記録が伸び悩んでいたり、メンバーから外されたことであったり・・・。

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07月25日(金)
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