ID:94789
きゅっ。
by きゅっ。
[724787hit]

■第5章 鑑定評価の基本的事項
鑑定評価に際しては、現実の用途及び権利の態様並びに地域要因及び個別的要因を所与として不動産の価格を求めることのみでは多様な不動産取引の実態に即応することができず、社会的な需要に応ずることができない場合があるので、条件設定の必要性が生じてくる。
条件の設定は、依頼目的に応じて対象不動産の内容を確定し(対象確定条件)、又は付加する地域要因若しくは個別的要因についての想定上の条件を明確にするものである。したがって、条件設定は、鑑定評価の妥当する範囲及び鑑定評価を行った不動産鑑定士等の責任の範囲を示すという意義を持つものである。
(2)鑑定評価の条件設定の手順
鑑定評価の条件は、依頼内容に応じて設定するもので、不動産鑑定士等は不動産鑑定業者の受付という行為を通じてこれを間接的に確認することとなる。しかし、同一不動産であっても設定された対象確定条件の如何又は付加する地域要因若しくは個別的要因についての想定上の条件の如何によっては鑑定評価額に差異が生ずるものであるから、不動産鑑定士等は直接、依頼内容の確認を行うべきである。
@ 対象確定条件について
対象確定条件については、対象不動産に係る諸事項についての調査、確認を行った上で、依頼目的に照らしてその条件の妥当性を検討しなければならない。特に、対象不動産が土地及び建物の結合により構成される場合又はその使用収益を制約する権利が付着している場合において、例えば抵当権の設定のための鑑定評価、設定された抵当権をもとに証券を発行するための鑑定評価等関係当事者及び第三者の利益に当該鑑定評価が重大な影響を及ぼす可能性のあるときは、独立鑑定評価を行うべきでなく、その状態を所与として鑑定評価を行うべきである。
A 地域要因又は個別的要因についての想定上の条件の付加について
想定上の条件を付加する場合において、
ア 実現性とは、依頼者との間で条件付加に係る鑑定評価依頼契約上の合意があり、当該条件を実現するための行為を行う者の事業遂行能力等を勘案した上で当該条件が実現する確実性が認められることをいう。なお、地域要因についての想定上の条件を付加する場合には、その実現に係る権能を持つ公的機関の担当部局から当該条件が実現する確実性について直接確認すべきことに留意すべきである。
イ 合法性とは、公法上及び私法上の諸規制に反しないことをいう。
ウ 関係当事者及び第三者とは、依頼者及び鑑定評価の結果について依頼者と密接な利害関係を有する者のほか、法律に義務づけられた不動産鑑定士による鑑定評価を踏まえ不動産の生み出す収益を原資として発行される証券の購入者、鑑定評価を踏まえ設定された抵当権をもとに発行される証券の購入者等をいう。
想定上の条件が妥当性を欠くと認められる場合には依頼者に説明の上、妥当な条件へ改定することが必要である。
2.価格時点の確定について
過去時点の鑑定評価は、対象不動産の確認等が可能であり、かつ、鑑定評価に必要な要因資料及び事例資料の収集が可能な場合に限り行うことができる。また、時の経過により対象不動産及びその近隣地域等が価格時点から鑑定評価を行う時点までの間に変化している場合もあるので、このような事情変更のある場合の価格時点における対象不動産の確認等については、価格時点に近い時点の確認資料等をできる限り収集し、それを基礎に判断すべきである。
将来時点の鑑定評価は、対象不動産の確定、価格形成要因の把握、分析及び最有効使用の判定についてすべて想定し、又は予測することとなり、また、収集する資料についても鑑定評価を行う時点までのものに限られ、不確実にならざるを得ないので、原則として、このような鑑定評価は行うべきではない。ただし、特に必要がある場合において、鑑定評価上妥当性を欠くことがないと認められるときは将来の価格時点を設定することができるものとする。
3.鑑定評価によって求める価格の確定について
(1)正常価格について
現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件について
@ 買主が通常の資金調達能力を有していることについて

[5]続きを読む

03月03日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る