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ゆれるゆれる
by てんのー
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■椎名さんと・・・
椎名誠『砂の海 楼蘭・タクラマカン砂漠探検記』読了。奥付を見ると文庫化は去年の末だから、まだまだ新しいものだ。まあ、この旅行自体はまだソ連が元気だったころの話だから、もうかなり昔といえば昔だが。この人は最近、かつてのパワーがなくなってきているのではないかと思っていたのだが、ちかごろはどうしているのだろう。それにしても、この本では、以前の彼なら決して書かなかったような表現で文章がまとめられていたりして、なんだか残酷だなあと思う。時間の流れが、だ。
いちいち叙情的に、月がどうしたとか、彼女らはこれから帰って昼寝をするだろうとか、そういう表現をする彼が(意識して書いているようなところがある)、なんとなく残念なのだ。
もちろん、一面的に見てはいけないと思う。中学一年のとき、初めて、はまった物書きが椎名さんだった。覚えている。『日本最末端真実紀行』だった。それからというもの、文字通りかき集めるようにして本棚を椎名だらけにした。『日本〜』はもちろん好きだし、そもそも何でも読む。「新宿赤マント」シリーズ、『アド・バード』『水域』『ねじのかいてん』などのSF(後者2作は傑作だ!)、そして『白い手』『岳物語』や『犬の系譜』の系譜。叙情や私小説的手法が嫌いなのでは、けっしてない。
僕が椎名さんの本で一番好きなのは、『パタゴニア あるいは風とタンポポのものがたり』だ。
この本は、世の紀行文の中で一番好きな作品でもある。そして、恋愛小説の中でも。
椎名さん、そんなに落ち着いてちゃつまんないよー。
じいさんみたいに、昔の武勇伝や見聞を語らないでよー。
10月02日(水)
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