ID:87761
ゆれるゆれる
by てんのー
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■曇り
例の日朝首脳会談のことは、久々にこちらでも話題になっているニュースだ(宇多田ヒカルの結婚に騒いでいたのは僕だけだった)。
今の国際社会の中で、マレーシアという国の処世術は、今の日本にとってずいぶん示唆的だと思う。
えらそうなことを書くのは、この日記がなんの影響力も責任もないものだからだけど、なんだかブラックユーモアじゃないかと思うくらい、マレーシアの現在はおもしろい。
一つ、反テロという大義名分への立場。マレーシアの小さな大首相は毎度のことだが、アメリカの独善的態度に対してすこぶる敏感だ。アフガン空爆から、今度のイラク攻撃まで、「テロ撲滅には何の効果もなく、むしろ逆効果で、テロリストたちに口実を与えるだけだ」という発言は一貫している。今度は副首相に「マレーシアはテロリズムを憎むが、大国の下男にはならない」と言わせている――言わせる、という表現がふさわしいだろう。まるで日本人に、自分たちの姿勢を誇っているみたいに聞こえる。
一つ、教育制度と英語。マハティール涙の辞意表明から少しして、「理数系科目はすべて英語で行う」との改革案が提示された。しかも実施は来年度からというから実に急だ。マレーシアの教育制度は単純ではなく、中国系の学校では英語による科目運営も珍しくないそうだが、マレー系の学校からは反発必至だとか。マハティールさんの涙は、言いにくい政策を発表するための小道具だったんだろうなんて憶測も飛ぶが、それくらいの制度改革には違いない。
日本の教育制度についてうんぬんされるけど、なんと言っても「母国語で最高学府の学問まで、最高水準の知識を得られる」というのは、これは文句なしにすばらしい成果である。翻訳マニアみたいな人も多かったのだろう。卒業生の質はともかくとして、学問をやる気のある者にとってこれほどの環境はない。
ちなみにマレーシアでは英語が準公用語である。植民地としての長い歴史は無視できないが、とにかく特にKLなどでは英語だけでもほぼ間違いなく、生活に不自由しない。だが近頃目立って国民の英語能力が落ちてきており、TOEICなどでもかつて大英帝国だった諸国の中で不振なのだという。そして、「インターネット」「ボーダーレス経済」による英語の価値の上昇に対応するため、というのが、お上が英語を教育現場でいまクローズアップする言い分なのだ・・・・・・日本のお上連中はぜひマレーシアの教育改革の過程と結果を注視するべきだ。
タクシーの運ちゃん、マックの学生バイト、タバコ屋のおじいちゃんに日本人的英語を笑われるような国のお話である。ワールドカップ中に「外国人の方は入店お断り」の張り紙が国中の百万都市にあふれるような国とはわけが違うのだ。その国にしてこんな強引なことをやらなければ英語は物にならないと理解しているのだ。日本のへっぽこ「英語を第二公用語に!論者」よ、あんたらどれだけ英語(むしろ日本語)を操れるのかはともかく、机上の空論はやめてマレーシアまで来てよく見てくれ。
あ、へっぽこ「早期英語教育を!論者」と「会話重視の英語教育を!論者」もかならず。あんたら、言いたいことは分かるけど無理だから。中途半端は混乱を生むだけだから。マレーシア連邦の覚悟をよく考えて。
一つ、指導者のあり方。この人ルックイーストを言い出して実践してるだけあって、「マレーシアは日本や韓国の真似に終始するのではなく、欠点からもより多くを学ぶ」と率直におっしゃる。開発独裁と呼ぶなら呼べ。だがマレーシアは実際ASEANでも屈指の(つまり世界でも屈指の)成長を今もなお続けている。通貨危機後のシンガポールやタイのもたつきなど目に入らないよ。・・・おそろしい実績が圧倒する。そうした上で、アジアにはアジアの風土、人間にあったスタイルがあるはず、日本よ韓国よ中国よ、アメリカンスタンダード、ホワイトスタンダードに流されるなよ。ともおっしゃる。いやメッセージはシンプルに限るね。説得力は、もちろん実績のなせる業だ。
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09月18日(水)
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