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Kenの日記
by Ken
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■ザルツブルグ音楽祭の「ドン・ジョヴァンニ」
NHKBSプレミアムで放送された2014年夏のザルツブルク音楽祭で演奏されたモーツアルトの歌劇「ドン・ジョヴァンニ」を観ました。
ドン・ジョヴァンニ:イルデブランド・ダルカンジェロ
騎士長:トマシュ・コニェチュニ
ドンナ・アンナ:レネケ・ルイテン
ドン・オッターヴィオ:アンドルー・ステープルズ
ドンナ・エルヴィーラ:アネット・フリッチュ
レポレッロ:ルーカ・ピサローニ
ツェルリーナ:ヴァレンティナ・ナフォルニツァ
合唱:ウィーン・フィルハーモニア合唱団
管弦楽:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮:クリストフ・エッシェンバッハ
演出:スヴェン・エリック・ベヒトルフ
収録2014年8月(ザルツブルグ)
2006年のザルツブルグ音楽祭で演奏された「ドン・ジョバンニ」でレポレッロを演じたダンカンジェロが今回「ドン・ジョバンニ」を演じました。演出はザルツブルグで新演出。前回のハンプソンの時の演出も奇抜でしたが、今回の新演出もかなり奇抜で「ストーリー・台詞」と舞台で進行するオペラがなかなか噛み合わず、疲れる場面は少なくありませんでした。
領主・貴族の「ドン・ジョバンニ」と領民の「ツェルリーナ・マゼット」の関係が現在の「ご主人と使用人」以上の身分の違いがあることによる「仕掛け」が、旅人とホテル従業員との関係で成立するとするのは少し無理があります。ツェルリーナ・マゼットの結婚式の場面とかドン・ジョバンニが騎士長の亡霊を招待する食事場面など舞台設定が曖昧になっていて臨場感が足りないと思いました。
指揮「エッシェンバッハ」だということであまり期待をせずに見始めましたのですが、予想通り序曲から第一幕後半位までは偶にウィーンフィルから硬く荒っぽい音がしていました。エッシェンバッハの硬い指揮姿を想像するとその音楽も仕方ないかなと思われました。歌手には酷な「超スピード」の部分があったり、フレーズの最後に余裕が無く歌が窮屈になっていた部分もありました。しかしニ幕以降はウィーンフィルは多少安定感を増して伴奏していたと思います。
歌手では「ダンカンジェロ」がさすがに素晴らしい声ですし、他の配役陣も総じて安定した歌唱を聞かせていたと思いました。しかし見て居て疲れるオペラだなと思いました。それは歌手人のエネルギー状況が常に「力演モード」になっていて聴衆に緊張を強いるものだったからだと思います。その中で「オッタービオ」を歌った「アンドルー・ステープルズ」が大変冷静で丹精な歌を聞かせてくれたと思います。この役は「ドン・ジョヴァンニ」では少し「飛んでいる役」ですが、今回は安定感抜群で観客がゆったりと聞くことが出来た数少ない場面だったと思います。彼にはブラボーが掛かっていました。同じような場面は「ドンナ・エルヴィーラ」にも容易されていましたが、エッシャンバッハの伴奏は冷静に歌うことを許さず、感情を前面に出す歌唱が多かったように思えます。「ドン・ジョバンニ」に対する愛情と憎しみは落ち着いて表現してもらったほうが帰って納得感が強いと思うのですが。
ドン・ジョヴァンニの人間性を表現するのは大変難しいと思います。今回のドン・ジョヴァンニが死んでからも地獄で女性を追いかけているような演出が行なわれましたが、そこまで表現されると少し辟易です。また2006年版でもそうでしたが女性歌手がふくを脱ぐ場面が多すぎます。スカラ座のドン・ジョバンニでもそうでしたが女性歌手が下着姿で歌う姿は個人的には好きではありません。オペラですから感情は「歌」にこめて表現して欲しいと思います。
フルトヴェングラーがザルツブルグで指揮した「ドン・ジョバンニ」は大変安定していて名演だと思います。それは1954年のザルツブルグ音楽祭ですから、それから60年目の「ドン・ジョバンニ」ということになります。
06月26日(金)
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