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今日の私
by かずき
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■『ひめゆり』
<時間>1幕70分、休憩20分、2幕75分
<場所>東京芸術劇場1階B列23番
<作曲・編曲・音楽監督>山口I也
<作詞・演出>ハマナカトオル
<主な出演>
 キミ:島田歌穂、上原婦長:土居裕子
 滝軍曹:今拓哉、檜山上等兵:戸井勝海
 ふみ:狩俣咲子、ルリ:村上恵子、杉原上等兵:中本吉成、
 教頭:佐野信輔、神谷先生:竹本敏彰、親泊先生:福地洋子
 はる、かな、みさ:片桐和美、会川彩子、向井玲子
 ゆき(2幕の防空壕で座ったままの長いソロ):新井祐美
 サチ(赤ん坊の母親):三辻香織

観るたびに、もう二度と観るものかと思い続けて4回目、
結局は5演のうち初演以外は全て観ているという、
自分の根性なし加減を思い知らされている作品です。
ミュージカル座の、「皆できれいに歌い上げて、それで、
さあ泣いてください」という雰囲気にひたりきれないと、
置いてきぼりを食らうこと おびただしい演目なのですが。

けれど前回、今度こそ観ないとチケットを取らなかったのに、
ファンでもない友人から「他はどうでも、この戸井さんを
観逃すのはあまりに勿体ない!」と言われ、やっぱり観て。
本当でした。どうかするとMy戸井歴でも最高に良かった。
だから、再出演すると言われて、抗えもせずチケット取って。

やっぱり、良かった。戦いの中で人間性を失った男が
キミと触れ合うことで、ほのかに希望を取り戻す過程が
本当にリアルに立ち上がってくるだけに、共感させられる。
彼の視点で舞台を観ると、類型的に描かれた女学生たちも
「明るさや希望・夢を失わない、戦場にあって最後の光」
と見えてくる気がするから、すごく不思議。おかげで、
はる・かな・みさの場面すら、これもありかと初めて思えた。

さすがに、サチ関係の場面までは影響力も及ばず、
こんな場面でこんなことを思うのもどうかと思いつつも、
「いやもう分かったから、次行こー」とか思ってしまい、
そんな自分に、ちょっと嫌な気分にはなりましたが。
テーマが戦争などの場合「舞台として退屈」であっても、
「退屈」と感じることに罪悪感があるのが嫌なところ。

でも団員さんたちの演技も良くなってきていると思うし、
土居さん&歌穂さんだと、きれいごとな台詞や歌も、
少し人間味を感じさせてくれるのが有難かったです。
今回、檜山がリアルであったことで、戦った人間の
救いとしての物語は感じ取れたと思います。けれど、
多分タイトルからすれば本当に描きたいはずであろう
少女たちの物語は、私にとっては未だに、美化された
「悲しい過去でした」という他人事のお話のままです。

このままじゃ、私も含めて、観た人たちは、勝手に
彼女たちに涙しただけで、すっきりと観終わってしまう。
せっかく、こういうテーマを真正面から扱うのなら、
もっと何か違うやり方が必要なんじゃないのか。
再演を重ねてミュージカルとして成長してきて、
5演目にして、今度はそんなことを思い始めています。
08月05日(金)
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