ID:54909
堀井On-Line
by horii86
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■6425,閑話小題 〜わたしにとってドモリは武器である
          『バーカウンターは人生の勉強机である』島地勝彦著
   * 『意識が稲妻、舌は蝸牛』なら持てるは!
 『プレーボーイ』元編集長で100万分雑誌に育てあげ、集英社の社長を最後に、
10年前にリタイア、現在は新宿伊勢丹に2014年に『サロン・ド・シマジ』という
店を開いて現在に至っている。連載していた架空の雑誌の立ち飲みバーを現実に
開店させたもの。週末には本人が現にシェーカーを振っているというから幸せな
ことだ。 で、先日、図書館で、この本を見つけて借りてきたが面白い。
島地といえば、開高健とのジョークバトルが繰り広げられた名対談集、
『水の上を歩く? 酒場でジョーク十番勝負』が面白かった。それをキッカケに
ブラック・ジョークを探し求めた時期があった。 …20年になろうか。

≪ マスターの流暢な説明を聞きながら、90歳の瀬戸内寂聴は20代の秘書に
 負けず杯を重ねた。すらすらウイスキーの蘊蓄を披露している最中に、突然、
瀬戸内さんが言った。「マスター、今夜はつまらないわよ。どうしてドモッテ
くれないの。あんたの吃音には色気があるんだから」
 そう、マスターは生来のドモリである。カ行とタ行に弱く、素敵なレトリック
が浮かんでも舌の上で音にならないで死んでいく。
その昔、同期の現作家がドモリで、初任給を懐にすし屋に行ったときのことだ。
2人ともトロが食べたいときに、「ト」が口から出てこない。
「おまえ頼んでくれと…」というと、「ええと、ええと…」と口ごもる。
「海老ですか?」と板前に言われ、海老を6匹も食べることになったそうだ。
マスターは、ドモリをカバーするため、幼いころからたくさんの言葉を学んだ。
「ためらう」を「逡巡」という言葉に置換えて話した。自然と語彙が増えたこと
からこそ、編集者としての仕事がこなせたのかもしれない。そんなマスターに
開高健さんが、『意識が稲妻、舌は蝸牛」という言葉を贈ってくれた。
「そういえば、瀬戸内さんが90歳で書き下ろした『月の輪草紙』を読返し、
驚いたことに清少納言の最初の夫がドモリだった。
「あれは私の創作です。どうしてもドモリにしたかったのです。明治生まれの
アナキスト大杉栄は女にもてました。それはドモリだった。『き、君のことが、
好きなんだ』なんて言われたら、女性の母性本能に直に火が付く。昭和初期の
‘編集の神様’と呼ばれた斎藤十一も、そしてあなたもドモルところが魅力的
なんです。男がペラペラ喋るのは軽薄にみえてなりません」 
聞いたか全国のドモリで悩んでいる紳士成年諸君、そういうことだ。今日から
自信を持って生きるんだ。コンプレックスを武器にした時こそ、人間が大人に
なった瞬間である。 ≫

▼ 「弱点を強みにかえる」というと、思い当たる節が幾つかある。
 ・話下手を逆手にとって、聞き役になる。そして褒める。複数の美人に何気
 なく三回褒め、後は距離をおく。意外なことに、美形を直接、褒められない
のが現実。その後は無関心に。中の上から上の女性は心の内で殆ど、絶世の美人
と確信している。逆にいえば、飢えた男どもの目線に敏感。だから、意識した
距離感が必要になる。何か何時の間にか、美人扱い管理の話になった。 
 で、この本も、下ネタを含めて、なかなかな。 次回か、次々回に…

・・・・・・
2015/11/06
浅田次郎の人生相談 ーうつ病で、死ぬことばかり考えています
          ー『世の中、それほど平等でない』浅田次郎著
 このところ、中島義道、西原理恵子、島地勝彦、上野千鶴子など、
各分野の人たちの人生相談を取り上げているが、それぞれの個性が面白い。
今度は図書館で、浅田次郎の‘最初で最後の人生相談’のタイトルに惹かれ
借りてきた。雑誌『プレーボーイ』の今東光などの人生相談の一連の作家の後
を引き継いだ相談、肩を並べるには?〜ランダムに目に付いたところから〜
  ● 質問: うつ病で、死ぬことばかり考えています
≪「先日、ヘルニアになり入院して、その後、自宅に戻って安静に過ごし、

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10月16日(火)
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