ID:54909
堀井On-Line
by horii86
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■7702・閑話小題 〜プーチンの事情
驚愕させ、社長解任・逮捕まで巻き起こした。FBIをして「世紀の贋作画商」
と呼ばせたその数奇な運命、そして彼の贋作バブルに生命を与え続けた日本人
の精神の「膿」を、綿密な取材からえぐり出す。 ≫
〜レビューより〜
本作は、バブル時代の前後に、ニセモノの美術品を売りまくっていたユダヤ人
画商イライ(エリ)・サカイの事件を追いながら、著者の七尾和晃氏が、イライ
が逮捕されるまでに直接インタビューを成功させることができるのだろうか…
という迫真のノンフィクション。
個人的に注目した点は二つ。
・一つは、昭和57年(1982)8月29日付の朝日新聞にすっぱ抜かれた、
「三越本店で開かれている古代ペルシャの秘宝展の大半が偽物である」という
記事から始まる「三越贋作事件」の顛末。 殺人事件まで起こっていたこの事件
(しかも遺体は遂に見つからなかった)には、事件発生前にニセの展示物と同じ
アナーヒター女神像を松本清張に売り込みに来ていたというちょっとした事件も
あって、清張も興味津々。
「(三越の)渡辺社長も、サカイという外国人ではなく、『無尽蔵』の主人の
ような日本人が持ち込んだものなら、だまされなかっただろうし、三越の展示品
でなければ、ニセ物の解説を書く学者も、予約する客もいなかっただろう。
今度のニセ秘宝事件は、舶来崇拝、ノレンや権威に弱い、といった以前から指摘
されている日本人の欠点を改めて露呈させたといえる」と‘清張’が呆れ顔で語る
ように、未だに本当にあった事件なのかと首を傾げてしまうほど馬鹿げた事件。
・二つ目は、その事件の中心にいるイライが、「『あの人はいい人だった。
もう死んでしまったけれど』と懐かしそうに称える人物のこと。
「圧倒的な実績と権威を誇っていた。おそらく日本の考古学会では一切の抵抗を
無に帰せしめる唯一の人物」と、著者の七尾氏が満を持して登場させしめた、
本書の裏ボス敵存在の話が大必見。「東京大学名誉教授の故・江上波夫」その人。
<(前略)イライが、日本民族の由来を説いた『騎馬民族征服王朝説』で文化
人類考古学の最高権威に君臨した東大名誉教授の故・江上波夫を『いい人だった』
と讃えたとき、日本だけでも潜在被害が数百億円は下らないと言われるイライ・
サカイの贋作事件は、戦後の日本が遮二無二に突き進んだ経済発展の裏で、絵画
という文化や芸術をも『通貨』に貶めた無節操ぶりを、鏡のように映し出しても
いよう。生前の江上をよく知る弟子筋の人間に会って、江上とイライとの関係を
質すと、当人は意外という風もなく、むしろ納得いくといった様子で語りだした。
『やはり江上さんの名前が出てしまいましたか…』>と某氏が語る衝撃の話。
≪ 高価な美術品に贋作はつきもの。ニセの『有名ブランド品』と同じです。
現存するモジリアニ、ゴッホなど、名画の作品点数は、増え続けています。
増え続けている、という現実そのまま、贋作であることを証明しているわけ。
とくに、近代、現代の名画に関する真贋判定は、ほとんど不可能性です。
なぜなら数百年まえの作品ではないので、近年の作品は科学的鑑定が難しいから。
作者が現存していても、アテにならないこともあります。
画家自身が制作の有無を忘れていて、判別できない場合です。
ようするに、画家(作者)自身に判別できないほど、クオリティーの高い贋作が
ある、ということです。ということは、過去の巨匠の作品も、おなじということ。
本書は、美術品市場の現実を裸にしています。美術館の収蔵品にも、贋作は
すくなくないのです。
本書は、美術品市場の現実を覗き見た、稀有な取材の成果といえるでしょう。
美術に趣味がある人間には、本書は一読の価値があります。
―
寅: おい熊よ、最近、なけなしの金をたたいて、変な骨董を買ったと
言うじゃないか。誰かに騙されたと、もっぱらだよ。大体、長屋に、
何が骨董だよ。
熊: いや、これを持っているだけで御利益があると言われてね。
生まれてこの方、俺の人生に良いことがないから、仏像の一つでも
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03月31日(木)
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