ID:54909
堀井On-Line
by horii86
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■1639, 死に花
その「語学習得法の秘密」はどんなものであったのだろう。
シュリーマンの学習法は、物語を丸暗記するという特徴的な方法を取っている。
英語では、当時よく読まれていたゴールドスミスの「ウェイクフィールドの牧師」
とウォルター・スコットの「アイバンホー」を丸々暗記している。
物語を丸暗記する方法は、ストーリーがあるので記憶に残りやすく、
文章を丸々憶えるので熟語やコロケーションなどの言いまわしがそのまま身につく。
この方法で、彼は英語を僅か半年でマスターした。
更に以下の勉強方を工夫していた。
・非常に多く音読すること。
・決して翻訳しないこと。
・毎日1時間あてること。
・つねに興味ある対象について作文を書くこと。
・これを教師の指導によって訂正すること。
・前日直されたものを暗記して、つぎの時間に暗誦すること。
・彼はさらに、会話をものにするために、
その外国語が話されている教会にかよって説教を聴き、
一語一語を口真似する方法もとっていた。
フランス語もこの同じ方法で、
「テレマコスの冒険」と
「ポールとヴェルジニー」を丸暗記して半年でマスターし、
続いてオランダ語、スペイン語、イタリア語、ポルトガル語を
流暢に話し書くことができるのに、それぞれ6週間以上かからなかった。
オランダ語以降の勉強は、同じ上記の物語の本を入手して学習したと推測される。
既にストーリーがわかっているため文法書や辞書を引く手間が大幅に省け
短期間の学習が可能になるからである
(同じヨーロッパ語族という有利性もあった)。
シュリーマンの成功の出発点は、
まずロシア語をマスターしたことであった。
ロシア語の学習は難しく、これによって他の商人を出し抜くことができたのだ。
このロシア語の勉強でも同じ「テレマコスの冒険」をテキストにして、
この本の丸暗記という方法を取っている点に注目したい。
同じ物語の本を使って各国語を横断的に次々に征服していく彼の語学学習法は
今日的視点からも誠に合理的で優れたやり方と言える。
ここまではよく世間に知られていることであるが、
今回紹介するルートヴィッヒの本は、その語学習得法の秘密のベールの深奥を
さらに垣間見せてくれるまたとない良書なのだ。
ルートヴィッヒは、遺品として残されているシュリーマンの語学学習ノートなどを
詳細に研究してこう述べている。
「彼は自分の選んだ多くの単語をふくむ長い単語帳と、これらの単語を使った
一連の文章を、一枚の紙のうえに教師に書いてもらい、一字一字、
文字をまねながら全体を書き写し、それを暗記する。
ついで彼は他の単語をふくむ二枚めの表を作製してもらい、一枚めの表を
手本にして、新しい単語をつくったり文章を構成したり、他の文章と
組みあわすことを試み、それを教師に訂正してもらう。
こうして彼は辞書を使いながらきわめて急速に、自分の語彙をふやし、
ついにその文章がいよいよ長くかつ複雑となるまで、それをつづけてゆくのである」
(本書 P74〜75)
ギリシャ語の学習では、
「これらのノートに書かれている文字は、しだいに達筆となり、新しい単語が
出てくると、彼はフランス語やその他のことばで見出しをつけている。
…この練習帳では小学校の生徒にかえったように、
抹殺したり、
インクのしみをつけたりしている。
しかもその間に、先生の筆跡で訂正の筆がはいっている…」
(本書 P76)
このギリシャ語の練習帳に書かれたシュリーマン自身の文章を少し引用すると、
「そのあと、…わたしはどうしたら内陸へ行けるか、どうしたら金持ちになって
土地を買い、えらい人になれるかを考えた。」
「わたしとタバコの取引をやる気はありませんか。
ロシアでも、大きいタバコ農場をつくらないものだろうか。
ロシア政府は便宜を与えないだろうか?」
「わたしは、じぶんが貪欲なことを知っている。
…こんなにまでがつがつしている事を止めねばならぬ。
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09月28日(水)
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