ID:54909
堀井On-Line
by horii86
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■1274, シュリーマンの話−2
文字をまねながら全体を書き写し、それを暗記する。
ついで彼は他の単語をふくむ二枚めの表を作製してもらい、一枚めの表を
手本にして、新しい単語をつくったり文章を構成したり、他の文章と
組みあわすことを試み、それを教師に訂正してもらう。
こうして彼は辞書を使いながらきわめて急速に、自分の語彙をふやし、
ついにその文章がいよいよ長くかつ複雑となるまで、それをつづけてゆくのである」
(本書 P74〜75)

ギリシャ語の学習では、
「これらのノートに書かれている文字は、しだいに達筆となり、新しい単語が
出てくると、彼はフランス語やその他のことばで見出しをつけている。
…この練習帳では小学校の生徒にかえったように、
抹殺したり、
インクのしみをつけたりしている。
しかもその間に、先生の筆跡で訂正の筆がはいっている…」
(本書 P76)

このギリシャ語の練習帳に書かれたシュリーマン自身の文章を少し引用すると、

「そのあと、…わたしはどうしたら内陸へ行けるか、どうしたら金持ちになって
 土地を買い、えらい人になれるかを考えた。」

「わたしとタバコの取引をやる気はありませんか。
 ロシアでも、大きいタバコ農場をつくらないものだろうか。
 ロシア政府は便宜を与えないだろうか?」

「わたしは、じぶんが貪欲なことを知っている。
 …こんなにまでがつがつしている事を止めねばならぬ。
 …戦争中ずっと、わたしは金のことばかり考えていた。」

この文から読み取れるのは、彼がまず記憶しなければならぬ単語や熟語を選定し、
それらを含ませて、過去の自分の体験や自分が心からやってみたい事などに
結び付けて文章化する。それを教師にチェックさせて正しいものとし、
記憶するという方法をやっていることだ。

現在の学習法では、重要な単語・熟語を含んではいるが、
自分とは一切関係ない短文を無理やり次々と記憶してゆくのが一般的であろう。
しかし、シュリーマンの方法は、記憶術による夢のような連想力を働かせることが
できるのだ。
両者を比べてみて、記憶保持に雲泥の差が出るであろうことは容易にわかろう。

シュリーマンの語学学習法は、
・同一の物語を素材にして多言語にわたっる学習すること、
・自分に切実なこと密接なことを文章化して暗記し、その文章を
 つなげて行く事で長文も書けるようにすること、
・ネイティブの発音を徹底的に模倣すること、といったことに集約できそうだ。

繰り返すようだが、
今日の語学学習者にとっても参考になる優れた方法をシュリーマンは、
100年前に実行していたのだ。
また、この本の序文には、
彼が自分で作った10カ国以上の辞書があるという記載がある。
残念なことに、それがどんな編纂方式をとっているかは、この本には書かれていない。

シュリーマンは、なかなかの活動家で、江戸幕末にわが国にもやって来ている。
訪問したのは、横浜と江戸で、当時の日本の風景・日本人観など実に冷静な
観察をおこなっていて興味深い。

彼が発見したプリアモスの財宝は、彼の死後、遺言によりベルリン博物館に
寄贈されたが、第2次世界大戦直後から行方不明となっていた。
数年前、それがロシアで発見され現在公開されて今なお黄金の輝きを放っている。

ーーー
外国語習得年表

1842:英語、フランス語
 1843:オランダ語、スペイン語、イタリア語、ボルトガル語
 1844:ロシア語
 1854:スウェーデン語、ポーランド語
 1856:現代ギリシャ語 古代ギリシャ語
 1858-59:ラテン語、アラビア語
 1861:ヘブライ語

(文献)
 本書=ルートヴィッヒ「シュリーマン伝」白水社
1. シュリーマン「古代への情熱」岩波文庫
2. シュリーマン「シュリーマン旅行記 清国・日本」講談社学術文庫
3. ムアヘッド「トロイアの財宝」角川書店
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 http://www6.plala.or.jp/Djehuti/200195.htm 
 
『古代への情熱』(新潮文庫、1977年)
   ハインリヒ・シュリーマン

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09月28日(火)
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