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原案帳#20(since 1973-)
by 会津里花
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■American Pie




★1・American Pie


よく考えてみたら、私にとってなんと感慨深いことが起きているのだろう!!



私が好きな「萩尾望都」に「11人いる!」で出会ってからまだ1、2年しか経たない頃、ふだん読んでいない雑誌に珍しく萩尾さんが漫画を載せた。確か前後編2回に分かれていたと思うが、掲載された頃には読んでいなかったので、詳しくは知らない。

(でも、もう一度考えてみると、最初に読んだのは、漫画雑誌サイズのB5だったような気がするんだけど……記憶をしっかりファイリングしていなかったので曖昧。悔しいっ)

それが、「アメリカン・パイ」というタイトルの作品だった。

たぶん、当時の萩尾さんとしてはちょっと「少女漫画寄り」の作品だったと思う。いや、何せ、あの頃の萩尾さん、それまで「少年漫画」しか知らなかった私が極めて自然に受け入れられるほど、逆にいえば「少女漫画らしくなかった」のだ。

でも、私は、「アメリカン・パイ」がすっかりお気に入りになってしまった。

何度も読み返した。

何度も泣いた。



ここで、ちょっと作品の内容を簡単に紹介しておこう(そういうの、私あまり上手ではないけど)。

マイアミに住んでいる「グラン・パ」(売れないバンドをやってる)のところに、ある日ふらふらと一人の子どもがやってきた。初めは男の子のように見えたが、実は女の子だった。それが「リュー」。ことばに少しフランスなまりがあるので、グラン・パは「カナダあたりから来たのかな?」と思いつつも、行くあてがないらしいリューをしばらく置いてやることにした。

リューは自分のことをグラン・パに何も話そうとしないが、時々ドン・マクリーンの「アメリカン・パイ」を口ずさむ。

そのうちに、リューも少しずつグラン・パやバンドのみんななんかともうちとけてきたが、やっぱり自分のことは何も言わないので、いっそのこと、と思ったグラン・パが歌ってみるように勧める。

リューはためらいながらも、故郷のボルドーのぶどう園の様子を、アドリブで歌い始める……。

ここから先は、興味のある人はできるだけ自分で読んでね。

私は、作品の内容を先に説明してしまって、却ってその「味」をぶち壊しにしてしまうのが、怖くて仕方ないの。



さて、この作品のタイトルでもあり、また作中にも何度も引用されている「アメリカン・パイ」。

どうやって知ったのか、自分でもわからないのだけれど、私はこの曲が実在している、ということを突き止めたのだ。

漫画が描かれるよりも数年前(確か1971年か72年、とレコードには書いてあったと思う)、アメリカ人のDon MacLeanという人が、A、B両面で1曲、という、とても長ーい曲を作ってシングルで出した。あ、それとも、アルバムが先でシングルカットが後だったのかな?

とにかく、そのAmerican Pieという曲は実在するのだ。

私はほとんど狂ったようにその曲の入ったレコードを探し、楽器屋さんに注文した。

割とマイナーな人だったのね。曲解説はされているのだけれども、訳詞がついていない。

私は一生懸命、自分で訳そうとしてみたが、なんだか俗語? 比喩? が多くて、そのまま言葉どおりに訳しても意味が分からない。

いつか訳そうと思って、当時つけていた日記、その名も「原案帳」に、全部書き写した。

それは、今、私の目の前にある。

装丁もこわれ、気をつけて扱わないとばらばらになってしまいそうな、100ページのノート。

その、正味3ページ分を費やして、この歌詞は手書きで書かれている(当然か。あっ、英文タイプを習ってたから、それでやってもよかったんだ! たしか……そうしようとも思ったけど、さすがに間違いが多すぎてリスキーだから止めたんだっけ)。




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03月15日(水)
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