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原案帳#20(since 1973-)
by 会津里花
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■感想「目を閉じて抱いて」 「夏の約束」
★1・感想「目を閉じて抱いて」やっと完結
★2・ネタばれ感想「夏の約束」
★1・感想「目を閉じて抱いて」やっと完結
(本当は「夏の約束」の感想とか書きたいんだけど、いろいろあってまだノッて来ないので、別のを書いちゃったりして;なんか、いちばん大きな宿題を後回しにしてしまう中学生のような気分;うっ、これは現実にそうだった! あーん、変わってないなぁ、自分……)
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内田春菊の「目を閉じて抱いて」が、ようやく完結した、と聞いて、私は書店へ急いだ。
で。
……今、5巻を読み終わったばかりだ。
手が震えている。
「正常」に名を借りて、その中に依存することで「異常」とされる人たちよりもずっと歪んでしまう人々を、巧みに描いていると思う。
「樹里」も「高柳」も、タイプとしてはけっこうそこらへんにゴロゴロいそうな女や男だが、「異常」とされることが多いタイプである「周」「花房」「七臣」と比べたら、よっぽどヒドいことをしている。
高柳が逮捕されたとき、その直前のセリフで「ああ、こいつはもう引き際だなぁ」ってわかっていたのに、「これでやっと救われる」というような想いに駆られたのだった。私の「震え」はここからだ。
高柳「だから正当防衛だよ オレは 間違ってないだろ!!」「おかまに おかまって言って 殺されちゃあ かなわねえよ!」
「オレたちちゃんと学校行って会社入って まっとうに生きてる 人間だぜ!!」「こんな そこらじゅうで やりまくっている・・」「おかまとかおコゲとか そいつらにやられて 喜んでるやつらとかに 脚ひっぱられんのは まっぴらなんだよ!!」
これが大方の人々の本音なのではないか。
そうして、まともぶって、「異常」なことを「隠し」たり「非難」したがる人々ほど、ひと皮むくととんでもないエゴが腐臭を放っている。
唯一、「異常」でないにも拘らず、(私にとって)「向こう側」の人間でなかった「城戸津也子」の存在が救いだ。
ラスト、花房と津也子がともに妊娠しているのも、私にとっては「救い」と言えば「救い」だ。
「あとがき」で、作者の内田春菊氏が言っている。
「みんな、花房に対して持ってるイメージ、でか過ぎ。」
でも、私に言わせれば、妊娠することもさせることもできるIS(インターセックス;半陰陽;ここではたぶん「真性半陰陽」として花房を描いている)なんて、多くて1億人に1人、もしかしたら60億人に1人ぐらいしかいないような気がするので(統計はたぶんまだとれていないでしょうけど……)、そういう意味では
「女神」
として扱われてしまうのも、仕方ないんではないかい?
(あ、そろそろ「震え」が止まってる)
「自分が知ってることからしか描けません」
とご本人もおっしゃっているが、お話の初めから、
「そんなISいないよー」
と思いながら、それでも冒頭に挙げたようなテーマがくっきりと見えるから、私は読みつづけた。
途中、完結しないまま、連載が止まってしまった(だいいち、「フィールヤング」っていう雑誌、探しても見つかったことなかったんだもん!)ので、すっごく欲求不満だったけれど、……うーん、上手な言葉が思い浮かばないや、とにかく、よかった!
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(掲載直後に加筆:まだまだ多くの人々が、インターセックスそのものに対して大きな誤解や偏見を持っていると思います。
インターセックスは基本的に臓器のヴァリエイションであり、「性格」や「気質」の異常なんかではありません。
だから、たまにアダルト系の小説や漫画なんかで「両性具有」ものとかあるけれど、あんな男性器も女性器もびんびん、なんて人は現実にはほとんど;全くと言っていいぐらい;存在しないのです。
むしろ、性については「人と違う」ことを体験し、多くの場合それについて適切な理解へと導かれることもないので、「性同一性障害」と同じようなアイデンティティの阻害を引き起こすことも多いのです。
正直、自分自身も、無知な世代の頃には「半陰陽」を自分のファンタジーの「道具」のように扱っていたので、その反省も込めて記します。
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02月10日(木)
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