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原案帳#20(since 1973-)
by 会津里花
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■「やがてイスラム主義の国になるエジプト」だって。
言っている「6%」なのか、今は判然としない。だが、今回の革命の中で、同
胞団が自分たちの力を意図的に小さく見せようとしていることは確かだ。
報道によると、タハリル広場の入り口で武器持ち込み規制の検問をしていた
同胞団員は、へジャブ(スカーフ)をかぶっていない女性たちが来ると歓迎し、
積極的にテレビに映るようにしてくれと女性らに頼んでいた。デモ隊がへジ
ャブ姿ばかりだと、同胞団の影響力が強いのだと世界の視聴者に思われかねな
いからだった。同胞団は、非常に良く組織され、都会の貧困層が多く住む地域
に無償の病院や学校を建てて運営したり、食料支援をするなど地道な努力によ
って、広範な草の根の支持を得ている。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2011/02/03/AR2011020305073.html
Muslim Brotherhood looks to gains in Egypt protest
エジプトの軍部は、イスラム同胞団の台頭を何とか抑えたいだろう。しかし
米政府は「真の民主化」を求め続け、エジプト軍部に対し、同胞団を抑圧する
なと求め続けるだろう。軍部が米政府の意に反して同胞団を弾圧したら、米政
府はエジプト軍を公式に非難し、軍事援助の打ち切りなどの経済制裁をするだ
ろう。エジプトの混乱が長引き、国民が困窮するほど、同胞団の貧困層に対す
る支援活動が重要なものとみなされ、同胞団に対する支持が増える。米国から
の圧力に屈して、軍部が民主的な選挙を許すと、同胞団が与党または連立与党
の重要構成員になる。イスラエルが懸念していた「エジプトの民主化はイスラ
ム主義化になる」という事態が実現する。
エジプトがイスラム主義化していくと、エジプトとガザを一体化しようとす
る動きが双方から強まる。エジプトとガザの国境には、幅500メートルのイ
スラエル領(フィラデルフィア・ルート)が挟まっており、イスラエルがそこ
からの撤退を拒否すると、エジプトとイスラエルの間が険悪になり、最悪の場
合、戦争になる。ガザのハマスとイスラエルが戦争になり、そこにエジプトが
巻き込まれる展開もあり得る。こうした紛争と平行して、パレスチナ自治政府
やヨルダンの王政がイスラム主義勢力によって転覆させられるかもしれない。
エジプト革命を受け、ヨルダンで国王が内閣を改造したが、国民の評判は悪い。
http://www.tanakanews.com/080125Gaza.htm
「ガザの壁」の崩壊
米国が「中東民主化」を容認し続けると、ヨルダンとパレスチナがイスラム
主義に転換し、イスラエルは戦争になり、政権転覆はサウジアラビアにも波及
しかねない。サウジ王政が存続できるとしたら、米国を非難してイスラムの大
義を支持することが必要だろう。これはサウジ王家が親米から反米に転向し、
イスラム同胞団やイランと仲良くすることを意味する。イスラム勢力が原油価
格を決める態勢になって相場が高騰し、1970年代の石油危機のように、イ
スラエルを支持する国に石油を売らないという宣言が出るかもしれない。
▼イスラム帝国が復活する?
こうした流れがどこまで進むか予測できないが、サウジアラビアがイスラム
主義に傾くと、ペルシャ湾岸諸国やパキスタンやアフガニスタンもイスラム化
の傾向が強くなり、アラブ全域がイスラム主義で統合的な動きを示す。イスラ
ム同胞団の目標である「カリフ」に近いものが出現するかもしれない。インド
ネシアやマレーシアなど東アジアのイスラム諸国も、何らかの政治転換をする
かもしれない。
すでにイスラム的な協調をみせているイランとトルコという2大勢力と合わ
せ、中東はアラブ、イラン、トルコという3つのイスラム勢力が協調する新体
制になりうる。米国の影響力は排除され(米議会で台頭する共和党の茶会派は、
すでにイラクとアフガンの占領を無意味とみなし、撤退を求めている)、
イスラエルは国家存続できない可能性が高くなる。
このようにエジプトのムバラク辞任は、世界的に巨大な影響を与える事件で
ある。欧米や日本の多くの人々が「エジプトがリベラルな民主主義に転換して
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02月14日(月)
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