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原案帳#20(since 1973-)
by 会津里花
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■今日、お誕生日なんですよ 告知とカムアウト
この世にいてはいけないとでも考える風潮が支配的だったのは事実で、
当時あなたに処置した医師はその「常識」に従ったのです。

でも、そうした「常識」によってあなたの心を傷つけるような処置をしてしまったことは、
(たとえ自分が当時の担当医でなかったとしても)謝るしかありません。

あなたは、自分が「男か女か」と悩むことについて、遺伝子、染色体を基準に
考える必要はありません。
あなたがどういう性の人として生きていくか、それがいちばん大切なことです。

(本人の希望を確認しましょう。もしもその場では混乱してしまって決められないのなら、
日を改めてもう一度説明しなおして、本人の意思が確認できるまで
粘り強く説明しましょう)

それでは、あなたがその性別で自信を持って生きていくのに必要な
サポートを、私たち医師がさせていただきます。
……」

私は自分がたぶん性遺伝子とかを原因とするタイプではないはずなのに、
なぜか自分をそういう人たちに重ねてしまいます。

以前よく言われていた
「停留睾丸を放置しておくと癌化してしまうから、
できるだけ早い時期に精巣を摘出するべきだ」
という説は、実はあまり根拠のしっかりしたものではなかった、と聞いたことがありました。
思春期いっぱい過ごしてしまってからでも、必ずしも癌化はしない、ということらしいですよね。
(詳しい方、いらっしゃったら教えてください)

私は、その時怒りに震えてしまいました。
はっきり言って、差別的な偏見があるから
「できるだけ早い時期」=「物心がつかないうちに」
と決め付けてしまっているように思えたのです。

marikoさんが関わっていらっしゃるAIS当事者の方にとって、
きっととても辛く苦しいことだと思います。
でも、「あなたがあなたという性別を自信を持って生きていけるということを
最重要視してサポートする」と言い続ければ、
もしも初めは自分の体を「いじられた」というショックから意固地になってしまっている
当事者も、
少しずつでも心を開いてくれるようになると思います。

「性同一性障害」は、多かれ少なかれ「性」の字を抜いても
「自己同一性(アイデンティティ)」に揺らぎを抱えながら育つことを余儀なくされます。
でも、それが子どもの頃から自分である程度認知できていれば、
揺らぎに対して自分でどうにかする、つまり「自己決定」を
しなやかに、たくましく身に付けていく人もいるのだと思います。

でも、半陰陽やその他の性分化異常を抱える人たち、
特に今はもう成人しているような人たちにとっては、
多くの場合「告知なし」で育ってしまっているのだろうと思います。

ちょっと感情が高ぶってきてしまったのでひどい言い方をします、
お許しください。

もしも小さな子どもが体に腫瘍を抱え、それでも顕在化しないから仕方ない、と
放置されてしまったら、どうなることでしょう。

現在、半陰陽やその他の性分化異常を抱えている人たちは、
まるでこの子と同じ状況に置かれている、といっても過言ではないと思うのです。

当事者でもない私がこんなことを言ってでしゃばるのは、
何か不自然で、自分でも違和感を感じます。

でも、性同一性障害の当事者が自分らしい性で生きていくことと、
半陰陽その他の性分化異常の当事者が自分の体について正しいことを聞く、ということは、
どこかが同じだと思います。

まだまだ「本当のこと」がよくわかっていないことがらも多いです。
たとえば、クラインフェルター症候群の人たちがいますけど、
この人たちは(たぶん今でも)医学的には「『男性の』性分化異常」ということになっているそうですね。
でも、現実に存在するクラインフェルターの人たちには、
体形の特徴などもあるのでしょうけれど、医学が認めているほど
自分のことを「男」だと思っている人は少ないようです。


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03月18日(月)
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