ID:51752
原案帳#20(since 1973-)
by 会津里花
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■チベット問題について……踊らされたくない(田中宇)1
「チベットには、中国からの経済支援が必要だ」と言っているダライラマが、今回のチベット騒乱を計画するはずがない。ダライラマは騒乱を抑制しようと努力している。亡命チベット人の国際的な運動組織の中には、ダライラマの意に逆らって、チベット独立を目指して中国と徹底的に戦うべきだと考えている人々がおり、彼らが運動を組織したのだろう。しかし彼らにはダライラマのような権威はなく、したがって動員力も低い。
http://www.mcclatchydc.com/world/story/31699.htmlhttp://www.mcclatchydc.com/world/story/31699.html
http://news.xinhuanet.com/english/2008-04/16/content_7984784.htmhttp://news.xinhuanet.com/english/2008-04/16/content_7984784.htm

 そう考えると、やはり今回の騒乱は、もともと反中国的なチベット人の国際組織作りを手伝ってきた「人権外交」を推進しようとする米英の諜報機関が、組織内の過激派を扇動し、米英マスコミにも大々的報道をさせて拡大した動きと考えられる。運動参加者の多くは、このような裏側に気づいていない。中国の台頭を恐れて中国嫌いになっている日本人の多くも「欧米より中国が悪いに決まっている」と思いたいだろう。しかし人々は、国際政治を頭に入れて、冷静に考え直した方が良い。
http://www.atimes.com/atimes/China/JC26Ad02.htmlhttp://www.atimes.com/atimes/China/JC26Ad02.html

 暴動というものは、何らかのきっかけがないと起きない。オリンピック前の重要な時期にチベット人を怒らせたくない中国政府は、チベット人をできるだけ懐柔し、暴動が起きないようにしていたはずだ。中国政府でもダライラマでもない何者かが、暴動を誘発したと考えられる。ダライラマ以外の亡命チベット組織の人々には、大した力はない。とすれば、最大の容疑者は、歴史的に亡命チベット組織を支援誘導してきた米英の諜報機関ということになる。
http://www.globalresearch.ca/index.php?context=va&aid=8625http://www.globalresearch.ca/index.php?context=va&aid=8625

▼運動に胡散臭さを感じる人々

 フィナンシャルタイムスのコラムニスト(Christopher Caldwell)は「(欧米には)北京オリンピックをボイコットするという目的が先にあり、どうやったらボイコットできるかという手段が模索されてきた。中国が(石油利権を持っている)スーダンのダルフル地方の虐殺に関与したとか、人権侵害をしているミャンマー軍事政権を中国が支援しているとか、いろいろな理由が動員されたが、今一つだった。そして今、ようやくチベット問題という格好のテーマが見つかったというコンセンサスが(欧米内で)作られている。こうした行為は悪いことだ。欧米は、開会式のボイコットもすべきでない。中国の面子を潰してはならない」と書いている。
http://www.ft.com/cms/s/0/987dc1ac-fcfa-11dc-961e-000077b07658.htmlhttp://www.ft.com/cms/s/0/987dc1ac-fcfa-11dc-961e-000077b07658.html

 欧米の市民運動系の分析者の中には、今回のチベット系の国際的反中国運動に胡散臭さを感じ、運動に参加しない方が良いという意志を発表する人が出てきた。パレスチナ問題に詳しい分析者は、チベットは独立する権利があるとしながらも、アメリカが敵視する中国が弾圧しているチベットの運動は大々的に喧伝され、アメリカが強く支持するイスラエルが弾圧しているパレスチナの運動は無視される現状を批判的に書いている。
http://bellaciao.org/en/spip.php?article16813http://bellaciao.org/en/spip.php?article16813

 チベット騒乱は、欧米の扇動によって起こっている可能性が高い。ダライラマは、むしろ止めに回っている。それなのに中国政府は「騒乱はダライラマ一派が画策した」と、ダライラマばかりを非難し続けている。中国政府が、こんな頓珍漢を言い続ける裏には、おそらく「中国の国民に反欧米の感情を抱かせたくない」という思惑がある。中国政府が「米英の諜報機関が、チベット騒乱を扇動した」と発表したら、中国の世論はすぐに欧米を敵視する傾向を強め、反欧米のナショナリズムの嵐が吹き荒れる。これは、中国と欧米との協調関係を崩し、敵対関係に変えかねない。

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04月20日(日)
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