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原案帳#20(since 1973-)
by 会津里花
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■チベット問題について……踊らされたくない(田中宇)1
 歴史的伝統として、中国西方のチベット人やウイグル人はインドや中央アジアの文明からの影響を受けている。中国東方の漢民族とは文明的な資質が異なる。チベット、ウイグル、モンゴルなど、中国の辺境地域の諸民族の中には「いつか中国から独立してやる」と考えている人がけっこういる。日本人旅行者に「中国から独立したら、日本は支援してくれるか」「日本を含む中国の周辺民族が団結し、中国(漢民族)の横暴に対抗しよう」などと言う人もいる。
私自身、何度か中国を旅行し、その手の発言を聞いた。北朝鮮に接する延辺自治州の朝鮮族の中には、韓国・北朝鮮・延辺を統合する大朝鮮の建国を語る人もいた。

 しかし同時に中国人は、国民の9割を占める漢族(漢民族)の間でも、他の地域の人々のことをぼろくそに言う人がかなりいる。上海出身と北京出身は互いにライバル視するし、北方と南方でも資質が大きく異なり、互いの嫌悪感がある。この延長に、歴史的に優勢(傲慢)な多数派の漢族と、劣勢で搾取される辺境の少数民族の間の敵対感情がある。

 日本にも、関西人と関東人の対抗心などがあるが、地域対抗心は、日本より中国の方がはるかに強い。私の感覚としては、中国の地域ごとの対抗心は、EU各国人の間の対抗心の強さに近い。日本では、地域の多様性がかなり弱いが、中国では多様性が生々しく、荒々しく残っている。

 日本人は江戸幕府250年、明治維新後150年の計400年間の中央集権の政治体制を経験し、国内各地の人々の特性・発想の均一化が非常に進んでいる。日本人の中で、多数派の日本民族とは異なる民族性が残るのは、明治維新まで「日中両属」の琉球王国として半分別の国だった沖縄だけだ。北海道のアイヌ民族に対する同化は、高度経済成長期までにかなり進み、今ではアイヌの民族性は、観光と市民運動によって何とか保持されているだけだ。チベットのダライラマは「中国はチベットで文化的虐殺をやっている」と述べたが、日本では少数民族に対する同化(文化的虐殺)はすでにほぼ完了し、昔そのようなことがあったことも知らない日本人がほとんどだ。

 中国では、辺境の少数諸民族は、文化的な資質が多数派の漢族と異なっていても、経済面では、中央の漢族地域に依存する傾向が強い。特に、漢族地域の沿岸部を中心に高度経済成長が続くこの20年間は、沿岸部の経済成長をおこぼれをもらう形で、辺境が発展してきた。中国政府は、経済成長で豊かになった国家財政の中から重点的に辺境地域への開発費を出し、内地からチベットへの鉄道など、辺境地域の経済インフラ整備を行い、辺境の人々の生活水準を向上させることで、辺境の諸民族の不満を緩和させてきた。チベット族など辺境の諸民族は、漢族への反感はありつつも、中国政府に懐柔される傾向だった。

▼ダライラマは北京五輪を支持

 チベット族の社会では、宗教指導者であるダライラマが非常に強い権威を持っている。ダライラマは、北京オリンピックに賛同を表明し、インドに拠点を置く亡命チベット政府は、国際聖火リレーに対する抗議行動をやめるよう、活動家たちに求める声明を出している。
http://www.nytimes.com/2008/04/11/world/asia/11dalai.htmlhttp://www.nytimes.com/2008/04/11/world/asia/11dalai.html

 ダライラマはここ数年、中国との敵対を避ける傾向を強め、以前はチベットの独立を訴えていたが、最近では「チベットは中国からの経済支援が必要だ」と述べ、独立ではなく本質的な自治の実現を目標にしていた。ダライラマは、2001年までは2年に一度ずつ、同じく中国からの独立傾向を持つ台湾を訪問していたが、中国政府を刺激したくないと考えて、その後は訪問しなくなった。最近では「台湾を重視しているが、もう台湾を訪問することはない」「台湾は中国と統合した方が良いだろう」と表明した。
http://wiredispatch.com/news/?id=94698http://wiredispatch.com/news/?id=94698


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04月20日(日)
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