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原案帳#20(since 1973-)
by 会津里花
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■『ルート225』(藤野千夜)感想
言語学的に見て(といっても、私はまだまだ勉強始めたばっかりなんだけど)
たぶん今の10代くらいの子たちの間でほぼ定着している使い方の日本語を、
きっちり押さえて使っている。
文法的にも乱れはないし、モダリティの使い方とか(だけじゃないけど)、さすが。
こういうホメ方すると藤野さんには迷惑かな?

でも、あえて言いたい。
だって、きっと、世代的には私と同じなんだから「10代の子たちの日本語」なんて
自然に使いこなすことはできないだろうに、
ただ「使う」ということだけじゃなくて、気持ちや情景や筋立てを、
そういう日本語で構成しているのだ。

ううーん。
やっぱり、ヘンなホメ方?

でも、私は、その文体に、とてもリアルな息遣いのある、生きた人のみずみずしい心を見た、と思った。

「心」なんて言葉が出てきてしまったのはなんとも「陳腐」だけれど、仕方ないや。

私は、まだまだ藤野さんにはかなわない。

他にも、言いたいことはいっぱいある。
でも、作品の放つ微妙な雰囲気を、言葉にあてはめて壊してしまいたくないので、
このくらいにしようと思う。

そうそう、あと一つだけ。
ある人が「児童文学」と言っていた。
「理論社」という版元が、どちらかというと思いっきり「児童文学系」だということらしい。
私には、「小学生にはちょっと無理かな?」という感じに思えた。
でも、中学生くらいだったら、とても共感できる内容なのではないか。
主人公と同じくらいの世代。
ただしもちろん、決して「子ども向き」で「大人にはちょっと」という感じではない。
っていうか、私が自分に置き換えても、充分に共感できるし、
いろんな面から見て、大人にとっても読み応えの高い作品だと思う。
(それは上に述べてきたとおり、ってくどいな>自分)
その意味では、私に「児童文学(?)」ということをサジェストしてくれた人が言っていたように
「芥川賞作家の児童文学への参入」というのは、確かに過言ではない、と思った。
それもすごい、と思う。

というわけで。
興味のある方、ぜひぜひ読んでみてもらいたい。
私は3時間くらいで(予想どおり)「一気に」読んでしまったけど、
この1500円(税別)は、決して高くはなかったと思う。
っていうか、値段のことを忘れてしまうくらい(だから上には書き忘れて、最後に書いているの!)。
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02月06日(水)
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