ID:48158
doo-bop days
by ブーツィラ
[192406hit]
■瞽女唄伝承者の萱森直子さん東京公演
「私は瞽女(ごぜ)ではありません。目は見えます。好きでやっているのです」「瞽女唄の魅力はどこにあるのか、知って、理解して、そして楽しんでいただきたい」
2/21(土)14時から東京・世田谷の小劇場「ブローダーハウス」で、新潟市出身の瞽女唄伝承者・萱森(かやもり)直子さんのライヴを観る。3週連続(金・土・日)公演『ごぜ唄が聞こえる』の3週目「越後ごぜ唄」の2日目昼の部として催された(フライヤーの表&裏)。
萱森直子さんは、盲目の女旅芸人・瞽女の小林ハルさん(1900‐2005)の最後の弟子で、瞽女を引退した小林ハルさんが入所する養護盲老人ホームに10年間定期的に通い、瞽女唄を習得した。小林ハルさんから伝授された瞽女唄に脚色や演出をせず、そのままの形で歌うことを信条とする瞽女唄伝承者で、津軽三味線グループ「どってん」の主宰者でもある。
私が以前観た萱森直子さんのライヴにおいて、萱森さんはライヴが終わったら瞽女唄のこと、ライヴの感想などを周りの人に話して下さいとお願いしていた。今回の公演ではそんなトークはなかったし、当初は投稿するつもりもなかったが、萱森さんの言葉がずっと心に残っていたこともあり、本公演を備忘録として書き留めておこう。
14時の開演直前に到着したところ、会場はすでにほぼ満席。観客の大半は年配の方のようで、私よりも若そうな人は数えるほどしかいない。客席数は通常48〜52席だが、MAXの60を超える「65」席(オーナーのブログの2/23付「参の段」より)が設けられたそうで、前列の椅子との間にまともなスペースのある席は残ってなかった。身長178センチ(体重59キロ弱)と大きな体格の私にとって、かつて経験したことがない窮屈な席でのライヴ鑑賞となる。開演を告げるブザーが鳴り終わると、瞽女宿を思わせる古民家風の舞台に着物姿の萱森直子さんが三味線を携えながら登場した。
最初の演目は、挨拶代わりとなる門付け唄の「庄内節」。冒頭に記したトークに続いて演じられた。会場の狭さも手伝ってか、三味線の音色、質感が直接響きかけてくるようで心地よい。萱森さんは「ブローダーハウス」の3周年を祝し、「ブローダーハウス」のキャッチフレーズ「あなたの好き!がここにある」を「庄内節」の歌詞に挿入して歌った。何か良い文句があれば覚えておき、一口文句として取り入れるよう小林ハルさんに教えられたそうだ。
萱森さんの瞽女唄のライヴでは、3〜4割近くをトークが占める。2007年12月と2008年9月に観た東京公演もその位の割り合いだった。トークでは、演目の解説や師匠の小林ハルさんのエピソードなどが語られ、瞽女唄を聴いたことがなかったり、予備知識のない方でも安心してライヴに臨める。
2番目の演目は、瞽女唄の最も有名かつ人気のある段物(語り物)で、瞽女宿に集まった村人の多くが嗚咽を漏らしたという「葛の葉子別れ」一の段。
あらすじは、信太の森に住む白狐が、狩人(石川悪右衛門)と戦って命を救ってくれた安倍保名(やすな)への恩返し・怪我の介抱のため、保名の許婚(いいなずけ)で行方不明となっている葛の葉姫に化けて保名と一緒に暮らす。月日を送るうちに保名との間に童子丸(のちの安倍晴明)を産んだが、童子丸が5歳の時に本物の葛の葉姫が来ることになり、白狐は信太の森に帰る決心をする。我が子・童子丸との別れのせつなさ、母の子への情愛を三味線の伴奏で物語るように歌う20分を超える語り物だ。
萱森さんの歌声は、越後瞽女の二大勢力である長岡瞽女と高田瞽女のうち、師匠の小林ハルさんが属した長岡系の瞽女の多くに通底する荒々しさが認められる。声の線は細いものの、肝の据わった芯のある歌声といえるだろう。
[5]続きを読む
02月21日(土)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る