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江草 乗の言いたい放題
by 江草 乗
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■雪崩の冬山とメタンの万博




 2017年3月に那須岳で高校生と引率の教員8人が死亡した雪崩事故の裁判で、宇都宮地裁は5月30日、業務上過失致死傷の罪に問われた教諭ら3人に禁固2年の実刑判決を言い渡した。

 オレはこの裁判の行方を注目していた。かつてオレは公務員だった時代に山岳部の顧問をしていた。自分が引率者として生徒を引率して山に登っていたわけで、もしもそこで遭難事故が起きればオレは指導者として引率責任に問われたわけである。

 その後、オレは私学に移籍してそこでは山岳部やワンダーフォーゲル部の顧問を引き受けることはなかったわけだが。教え子の一人がやはり山で亡くなった。文部科学省登山研修所主催の平成12年の登山講習会の時に発生した雪庇の崩落事故である。その事故は予見できたのかできなかったのか、それが争点となり研修会の講師が業務上過失致死罪で起訴されることとなった。そちらは嫌疑不十分となったが、国と講師が訴えられた民事裁判は最終的には和解ということになり、国は賠償金を支払っている。

 冬山は危険である。いや、登山自体が実は危険な行為なのである。それは季節を問わない。足を踏み外して転落すれば命を失うような場所はいくらでもあるし、クマなどの野生動物に襲われる可能性もある。オレは標高3000mを超える乗鞍岳の山頂に自転車を担ぎ上げたことがあるアホだが、今思うとどうしてそんな迷惑なことをしたんだろうと思うのである。当時は今と比べると登山者ははるかに少なかったわけだが。

 冬山と同じかそれ以上に危険なのが、来年の万博の予定地である夢洲だ。地中からメタンが吹き出すためいつでも引火・爆発の危険がある。大量のPCBなどのダイオキシンが埋設されている土地(一区)にたった50pの暑さで土をかぶせ、その上を舗装して駐車場にするらしい。夏の強烈な暑さで地中のダイオキシンが空中に放出されることは間違いない。吉村知事はよく「強烈だ」という言葉を使うが、メタンとダイオキシンの強烈な危険があるのが夢洲である。

 万博会場で爆発事故が起き、引率された児童生徒に犠牲者が出た場合、その責任はどこが負うのだろうか。万博協会か、大阪市・大阪府か、それとも維新の会か。維新の会の答えは予想が付く。「万博は国の事業だから国の責任だ!」と答えるのは間違いない。

 ところがこの那須岳の雪崩事故の裁判では「危険が予見できる場所に引率した教員の責任」とされているのである。

 そうすると、来年の万博も同様に危険が事前に予想されているわけだから、もしも事故が起きれば「危険とわかっているのに引率した教員の責任」とされてしまって、国も維新の会も万博協会も責任を負わなくて済むのである。オレは今回の那須岳雪崩事故の裁判の結果には、国が関与しているような気がするのだ。引率責任にしようとする国の意図が見え見えであるという意味で。

 引率責任が問われる危険な万博遠足に誰が引率を希望するだろうか。その万博に学徒動員しようとしている吉村知事は、もしも事故が起きれば責任を取ってくれるのだろうか。きっと「責任はある」とは言うけど「責任を取る」ことはしないと思うのである。吉村洋文が嘘ばかりのゲス野郎であるという事実を思えば、オレの予想どおりになるだろう。維新は自民党の出した「政治資金規正法」の改正案に「領収書は10年後に公開」という助け船を出した。10年経てば時効になってしまう。本当にゲスな連中である。


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06月01日(土)
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