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江草 乗の言いたい放題
by 江草 乗
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■Gとの遭遇




(食事中の方は後で読んで下さい)

 それは入浴中のできごとだった。

 我が家の浴室には蚊が居ることが多い。網戸の隙間から入ってくるのか、あるいはリビングよりも湿気の多い場所を好むのか、なぜか蚊がいるのである。もしも家族が旅行で家を留守にしてしまってお湯を抜くのを忘れていたりしたらきっと大量のボウフラが発生し、家の中に蚊が充満して悲惨なことになるだろう。

 その蚊がタイルにとまっているのを発見しては殺害するのが入浴時のオレのルーティンワークである。シャワーでお湯をぶっかけて流すこともあれば、単純に手で叩いてつぶすこともある。いずれにしても「殺す」の一択である。かわいそうだから殺す前に血を吸わせてあげるなどの恩情をかけることは100%ない。

 その日もいつものように蚊を2匹殺害して、それから洗い場の床を見たオレは、そこにふだん決して浴室では見かけないある物体を目撃したのである。それはG、いわゆる「ゴキブリ」なる高等生物だった。人類を常に翻弄し続け、どんなに工夫しても根絶できないあの不愉快生物、G(ゴキブリ)である。高い知能があるとしか思えない連中である。

 そのゴキブリは、仰向けになってバタバタ足を動かしていたのである。濡れた床に羽がひっついて起き上がれない状態で苦しんでいたのである。しかし、どうしてここにGが存在するのだろうか。

 排水溝から水の中を潜ってそこにたどり着くことがあるのだろうか。そもそも排水溝の中はどんな世界になっているのだろうか。オレはその侵入ルートの可能性をすぐに否定した。そうするとやはり脱衣室兼洗面所から床を移動してきたと考えるのが自然である。風呂場の入り口は5センチほどの段差がある。その段差で転落してその時に仰向けになってしまったということである。

 しかし、我が家ではまだこのような大型のゴキブリは目撃されてなかった。もしも棲息しているなら他の場所で目撃されているはずである。なんで大きなゴキブリがいきなり浴室に出現するのか。そこでオレは自分よりも先に入浴した妻の関与を疑ったのである。オレを驚かせるためにそこにゴキブリを置いたということである。ただ、ゴキブリを見ただけでいつも大きな悲鳴を上げ逃げてしまう妻が、生きたゴキブリをそこに置くことは不可能である。オレは即座にその可能性を否定した。

 なんでこいつはここにいるのか。浴室に入るときに足下にゴキブリがいれば必ず気がつくだろう。オレは湯船につかってから蚊を2匹殺害した。その間ずっとこのゴキブリはその状態でもがいていたのだろうか。いずれにせよ、そのもがいてるゴキブリを何らかの方法で排除しないといけない。しかし、ティッシュでくるんで取ろうとすれば激しく抵抗するだろう。ティッシュからオレの手に飛び移って来るかも知れない。くるむ前にそのゴキブリの息の根を止める必要があるのだ。浴室にあるもので何が武器になるだろうか。

 オレの目の前には牛乳石けんと、メリットシャンプー、ボディソープのボトルがあった。石けんでおそらくゴキブリは殺せない。そうなるともっとも効果的なのはメリットシャンプーと考えられる。オレはもがくゴキブリの上からそっとメリットシャンプーを垂らした。ほどなくしてゴキブリは動きを止めた。オレは全裸のまま浴室を出て洗面所でティッシュを多めにとって、それでゴキブリをくるみ、さらに小さなビニール袋に入れて密閉してから捨てたのである。これで一件落着である。

 シャンプーはあのしぶといゴキブリも容易に殺せる。オレは学生時代に愛用していたサンスター・トニックシャンプーがオレの頭皮に強いダメージを与え続け、ついには毛髪を失わせたことを改めて思いだしたのである。シャンプーのせいで禿げる。これは間違いない。どうかこの記事を読んだ人は、頭髪を大切にしてもらいたい。

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06月18日(日)
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