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江草 乗の言いたい放題
by 江草 乗
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■阪神大震災から28年〜家族を失うこと
阪神大震災の日、1月17日が近づくとテレビではその特集の番組が流れる。その中で視ていて辛くなるのは、高齢の親が震災で亡くした子のことを語るものだ。まだ働き盛りで、これからどんな未来が広がってるんだろうかという期待に満ちた人生が突然その瞬間に断ち切られてしまう。
神戸高校から大阪教育大に進学した29歳の吉岡真治さんは、震災当時は神戸市兵庫区の鵯越小学校(現夢野の丘小)で5年生の担任だった。前年夏には、前任の小学校で同僚だった千恵美さん(26歳)と結婚していた。千恵美さんのおなかには新しい命が宿り、震災の年の夏に生まれる予定だったという。
新婚夫婦は灘区六甲道にある6階建てのマンションに住むことになり、吉岡さんの母親の君江さんは歩いて20分の距離の所に夫婦で住んでいた。その6階建てのマンションは震災の衝撃で3階部分で真っ二つに折れ、地面に崩れ落ちた。今の耐震基準で建てられていればそんな被害はなかったのかも知れない。阪神大震災以前の建物の多くは地震の揺れに対して脆弱だったのだ。
母親の君江さんが息子を案じてマンションに駆けつけたとき、コンクリートのがれきの下から足首だけが見えた。それが息子だということはすぐにわかったという。
鵯越小学校の黒板に、真治さんが震災の3日前にチョークで書いた文字が残っていた。その黒板は保存されて今は君江さんの仏間にある。そして小学校には、君江さんが息子の真治さんを思って植えたあすなろの木がある。君江さんは震災が近づくと毎年、小学校の生徒たちに向かって話をするという。
子が親を失う気持ちと、親が子を失うこととは決定的に違う。それは、前者が多くの人にとって生きていれば必然的にいずれやってくることであるのに対して、後者のような状況は予測不能だからだ。親が子を思う気持ちは、子が親を思う気持ちの何倍も強いと言われる。親という立場になって初めて、自分の両親がどんな気持ちでオレを育ててくれていたのだろうかということに思いをはせることができる。
災害が起き、多くの被害が出れば人は年齢に関係なく突然その人生を断ち切られることとなる。その結果多くの「大切な人を突然に失う」という悲劇が起きてしまうのである。そして日本という地震国に暮らす以上、そうした大規模な自然災害を避けることはできないのである。
南海トラフ地震は必ず起きる。それは30年後かも知れないし、今この瞬間かも知れない。津波は大阪湾にも到達するだろうし、たとえ5mの高さであっても大阪の沿岸部のかなりの部分が水没することになる。もしも夢洲にカジノIRが建設されていればすべて破壊されるだろう。地盤が脆弱な沖積層の上の埋め立て地である夢洲は、大きな構造物の重みに耐えられる場所ではない。土木利権のためにインフラ整備に1兆円以上の公金をつぎ込んで無理に作られた施設はあっけなく最期を迎え、後に大阪市民、府民に残るのは巨額の借金のみである。そういう場所にカジノなんかを作ってはいけないのである。いや、そもそも居住地域にすべきではないのだ。
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01月17日(火)
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