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江草 乗の言いたい放題
by 江草 乗
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■葬式外交に反対する!
オレはまだ20代の頃、大切な教え子をマラリアで亡くした。教え子と言っても当時勤務していた高校の卒業生で、年齢で言うとオレよりも3歳下である。彼は山岳部のOBとして合宿に参加し、そこでオレと知り合ってから交流するようになった。彼は夜にオレの部屋に来て朝まで将棋を指したこともある。作家を目指していた彼と、国語教員のオレは妙に気が合ったのである。
その彼は、バイトで貯めたお金で念願のキリマンジャロに登り、帰国後謎の高熱で入院した。病院ではマラリアという診断をすぐに下せず、彼は2週間ほどの入院の後に帰らぬ人となったのである。もしもちゃんと病名を見抜けるような医師に出会っていたら彼は亡くならずに済んだのかも知れないとオレは思っている。その病院の名前はここでは書かないけれども。
葬儀に参列したオレはそこで見たくない光景を見てしまった。彼の父親はある地方自治体の助役を務めていたのだが、その葬儀会場には議員たちがたくさんやってきて名刺交換をし、政治のための会談の場所となっていたのである。談笑する連中に対してオレは無性に腹が立った。こいつらには故人を悼む気持ちなど毛頭無く、この場を自分の得票につなげることができればという私利私欲しか無いのかと思うと、オレは大声で「おまえらみんな出て行け!」と叫びたくなったのである。
雨に降り込められた白馬の山小屋で、横になることもできずに膝を抱えて寝たときに彼といろんなことを語り合ったことをオレは覚えている。彼は自分の付き合ってる女性のことや、専門学校での勉強のことなどいろいろと話してくれた。彼は自分がその女性と結婚してそして何十年も生きることを普通に夢見ていただろう。その夢は突然断ち切られてしまったのである。なんと哀しいことだろうか。
葬儀の時、オレは泣いた。いい年をした大人が、遺影の前に立つともうどうしようもなく悲しみがこみ上げてきて、涙があふれた。本当に悲しかった。なんでこんなことになったんだとオレは拳を握りしめた。亡くなった彼は20歳、オレはまだ23歳だったのだ。彼がこの世に残した悔いはいったい何だったのだろうか。
安倍晋三の葬儀を国葬にして、各国の要人を招いて外交の場として役立てようなどという人たちがいる。それが国益だという。そういう考えに対してオレが感じるのはただの怒りだけである。もちろんオレは安倍晋三という人間に対して軽侮の念しか抱いていない。彼は日本の政治倫理を徹底的に破壊し、国会で堂々と嘘をついても開き直ればOKという偉大な「道徳革命」を成し遂げた人物だ。その悪行の数々を思えば「国葬」などに値しない人物であることは明白だ。
しかし、安倍晋三がどんな悪人であっても昭恵夫人や家族にとっては大切な人であったことは間違いない。だから身内の方々がその死を悼む気持ちは否定しないし、家族でひっそりと葬儀を営めばそれで十分だと思う。
自民党や公明党の連中にオレは言いたい。おまえらは本当に安倍晋三の死が悲しいのか。その理由はただの損得の感情だけじゃないのか。こういうモラルハザードの人物が上に居たおかげで自分たちの小さな悪が守られたことへの感謝じゃないのか。オレはそのように問いかけたいのである。その上で、そういうくだらない政治利用のための「国葬」には反対する。彼は国葬などには値しないゲス野郎である。死者の悪口を普通は言わないオレもあえてここでは言わせてもらう。「おまえは壺のエージェントだったんだよ!」と。
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08月19日(金)
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