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江草 乗の言いたい放題
by 江草 乗
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■映画『ワルキューレ』を観て感じたこと
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 第二次大戦末期のドイツで実際に起きた「ヒトラー暗殺未遂事件」について描いた映画『ワルキューレ』を観てきた。暗殺未遂事件そのものは世界史の中の一事実としてしか理解していなかったが、映画を観てさまざまな当事者たちの想いが伝わってきた。

 ヒトラーが連合軍によるベルリン占領の時に自決したことは多くの人が知ってる。そのときに死んだと言うことは、暗殺計画は失敗に終わったということである。つまり、この映画の結末というのは別に観なくても観客はみんなわかってるのである。それでもオレがこの映画にぐいぐいと引き込まれたのは、自分たちの計画をなんとしても成功させなくてはという実行者たちの熱い想いが伝わってきたからではないだろうか。

 もしも日本で同様のことを起こそうとしていたらどうだっただろうか。昭和天皇を拉致してしてクーデターを起こし、軍の実権を握って停戦に持ち込む和平交渉を行うような動きがあれば歴史はどのように変わっていただろうか。天皇に停戦命令の詔勅を書かせ、それを使って軍を動かし、連合軍と和平交渉に持ち込むことができていれば・・・ということをオレは思うのである。マリアナ沖海戦に敗れ、サイパンやグアムが陥落した時点で日本本土が空襲圏内になってしまった。その時点で停戦して和平交渉を進めていれば、沖縄戦の悲劇も東京大空襲も、原爆投下も起きなかったと思うのである。

 戦争の終結を遅らせることで多くの犠牲者が出ることとなった。いや、8月15日に終戦を迎えたことで救われたという見方もあるかも知れない。あの時本土決戦や一億玉砕を叫んだ軍人たちがいたこともまた事実なのだ。

 連合軍のノルマンジー上陸作戦で決定的なダメージを受けたドイツ軍はすでに敗色濃厚だった。戦争を一日も早く終結させることで犠牲を少なくしたいと願う者たちがドイツ軍の内部にいたとしても不思議ではない。一人でも多く、戦場で失われる部下の命を救いたい・・・トム・クルーズが演じるクラウス・フォン・シュタウフェンベルク大佐もその一人だった。軍内部の人間であるからこそ、彼は多くの事実を知る立場にあった。ヒトラーという狂気を取り除かない限り、この大戦を終結させる手段はないということを理解していたのである。

 周到に準備された暗殺計画はなぜ失敗したのか。どんなに完璧な計画であっても、それが成就するかを最後に決定するのは、人智を越えたところにある何かなのかも知れない。穴だらけの計画でも成功するときもあるし、完璧なシナリオだったはずがあり得ないような手違いによって破綻することもある。

 オレは帰宅してからネットで「ヒトラー暗殺未遂事件」に関して調べてみた。そこで驚いたことは、事実に基づいた映画だけあって本人たちに似た俳優が起用されていたということである。ヒトラーは誰が観てもヒトラーだし、宣伝相のゲッペルスもそうだった。トム・クルーズがクラウス・フォン・シュタウフェンベルク大佐本人に似ていないことを除けば、フロム大将は実物と同じく海坊主みたいなオッサンだったわけで、映画を観る前にもう一度確認しておくべきだったと改めて思ったのである。そのあたり、全然本人と似ていないアイドルタレントを起用していても平気な日本映画とは大違いである。

 オレが映画の魅力をはかる時に使う一つの物差しが「時間が気になったかどうか」である。映画を観ながらふと「あと何分くらいだろう?」と時計を気にするとすれば、それはその映画がつまらないからあと何時間耐えればいいのかを確認することに他ならない。しかしオレはエンドロールが流れた時にはじめて「えっ、もう終わるのか」と驚いたのである。始まってから2時間という時間が経ったこともすっかり忘れていたのである。

 ベルリンにある旧国内予備軍司令部の中庭の壁には、事件の関係者の追悼碑文がある。そこにはこのように記される。


1944年7月20日に ドイツのために ここに死す

 ルートヴィヒ・ベック上級大将
 フリードリヒ・オルブリヒト歩兵大将

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03月29日(日)
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