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江草 乗の言いたい放題
by 江草 乗
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■失われた79年間について
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 人生の最後が近づいてきたとき、自分はどんな環境に自分を置いてるのだろうか。そのときに自分の回りには生活を共にする家族が存在するのだろうか。あるいは老人施設で自分は最後の瞬間を迎えるのだろうか。20年後、30年後の自分はいったいどうなっているのか。そんなことは誰も予想できない。しかし、予想できないからと何もしないわけではなく、人は将来のためにお金を貯めるし、年金を掛けるし、家族を築くのである。しかし、誰もがお金を貯められるほどの収入を得られるわけでもないし、誰もが家族を築くことができるわけでもない。生涯結婚しない人はこれからもどんどん増えていくだろうし、そうした人が、一人暮らしのままで年老いていくことも普通になるだろう。その中には当然のことながらホームレスという境遇に陥ってしまう方もいるだろう。

 もちろん東京や大阪にはホームレスの方のための自立支援施設がある。そこに居れば寝る場所と食事は支給される。しかし、高齢のために再就職もままならない場合、「自立」などという可能性はないわけで、だったらその次にどうすればいいのかという問題が立ちはだかる。だったら住む場所を確保して、生活保護が受けられるようにすればいいのかということなんだが、地方自治体の財政が窮乏する中で、無制限に生活保護を支給する対象を増やしていく余裕はない。その場合どうずればいいのか。このような境遇に陥ってしまうことはある意味自己責任なのかも知れない。しかし、だからといって社会はそれを放置するわけにもいかない。日本国憲法で生存権は保証されている。すべての国民は最低限の生活を営む権利がある。

渋谷駅近くで通行人2人刺されけが 79歳の女を逮捕2008年8月22日23時36分
 22日午後6時50分ごろ、東京都渋谷区の渋谷駅で女性が刺された、と110番通報があった。東急百貨店東横店付近で、通行人の20代の女性2人が刃物で刺されるなどし、救急車で病院に運ばれた。警視庁は、近くにいた女が事件への関与を認めたため、殺人未遂容疑で現行犯逮捕した。
 渋谷署によると、女は自称住所不定、無職北川初子容疑者(79)。「今週初めに施設を飛びだし、ぶらぶらしていた。金もなくなり、事件を起こせば警察が何とかしてくれるだろうと思った」と供述しているという。所持金は約6500円だった。
 北川容疑者は、同店東館の「東横のれん街」出入り口前で、都内の派遣社員の女性(26)の左腰を果物ナイフ(刃渡り約10センチ)で刺し、さらに数十メートル離れた同店西館の花店前で、神奈川県内の契約社員の女性(27)の左上腕を切りつけたとされる。派遣社員の女性は入院した。
 午後7時ごろ、現場に近いJR渋谷駅南改札口の券売機前で、警察官が事件の目撃者とともに北川容疑者を発見。持っていた紙袋の中には、血の付いたナイフと財布があったという。

 この北川容疑者は79歳、オレの父親とほぼ同年代なのである。そこでオレは彼女がこれまで送ってきた人生がいったいどんなものだったのだろうかと想像するのである。79年間のうちに彼女は結婚をしたのだろうか。子どもはいたのだろうか。もしかしたら子どもがいたけど亡くしてしまって、それでひとりぼっちになったのだろうか。あるいは誰かにだまされて、貯めたお金を奪われて生活の基盤を失ったのだろうか。そんなことをあれこれと想像してしまうのである。「何か事件を起こせば警察がなんとかしてくれると思った」と思った彼女にとって、自分の居場所のないこの世間よりも、刑務所や留置場の方が少なくとも安心して三度の食事にありつける場所だったのかも知れない。彼女が「食い逃げ」や「こそ泥」ではなくて、刃物で人を傷つけるような犯罪を選んだのはなぜか。中途半端に4,5年で出てきたくはなかったからである。彼女は自分の寿命が尽きるまで過ごせる場所を望んでいたのだろう。


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08月23日(土)
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