ID:41506
江草 乗の言いたい放題
by 江草 乗
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■ハメこまれた人たち17(アーバンコーポレイション)
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 2008年に入って新興不動産銘柄の倒産が続いている。アメリカのサブプライム問題で打撃を受けた金融機関が貸し渋りをするようになって資金繰りが悪化したなどと理由が語られているが、土地バブルはすでに昨年の夏にはじけていてそこからは下落する一方である。安く仕入れた土地を高く転売したり、そこにマンションやオフィスビルを建設してて稼ぐビジネスモデルは、土地価格がどんどん下がり出せばもはや成り立たないのである。マンション分譲なんかもそうで、売れなくて不良在庫になったらどんどん価値が下がっていく。周囲には地価が値下がりして用地コストの下がった新しいマンションが次々に建つのでますます売れなくなる。そうして資金繰りが悪化し、新興不動産企業は次々と退場していったのである。暴力団に地上げさせていたスルガコーポレーションの倒産、そして子会社の近藤産業が破綻して資金繰りが苦しくなったのに、大株主のSBIホールディングに見捨てられたゼファーの破綻と東証に上場している企業の倒産が相次いだ。さて、次はどこが倒産するのか。企業の頭文字を取ってUSAと呼ばれる危ない企業があるという。Sはスルガ、Aはアルデプロともアセットマネージャーズともアゼルとも言われる。ではUとはどこか。それがこのアーバンコーポレイションだったのである。昨年秋には2000円を超えていた株価は今年になってからどんどん値を下げ、5月にはもう500円台になっていた。ここにその一年間の株価チャートを示そう。
 

 このアーバンコーポレイション株の不審な値動きは5月に始まったのである。5月1日に542円だった株価はその後GWをはさんで急上昇し、5月15日には高値721円を記録する。そして5月16日にはドイツ銀行が目標株価を510円から620円に引き上げていた。この不自然な動きは何が目的だったのか。今だから推測できるのは、そのときにすでに高値からの空売り目的での仕掛けが入っていたということである。後に関わってくるBNPパリバがこのときから空売りをしていたといううわさもある。

 その後、アーバン株はゆるやかな値下がりを続けていた。不動産株が全体に下げていたこともあって、ここも他の銘柄に連動するように株価が推移しているのだと誰もが思っていたわけで、実際不動産株の下落率はかなりのものだった。他の銘柄を見ても一年間で株価が1/10以下になったものがかなりある。不動産セクタ全体が悪化しているからそれに連動して下げているだけだとみんなが思っていたのである。最初に書いたような事情で銀行の貸し渋りに遭って、資金繰りが急速に悪化していたということを投資家たちが知ったのはもっと事態が進行してからなのだ。しかし、情報をつかんだ外資系の証券各社は早々と不動産株の空売り体制に入っていた。アーバン株の空売りもすでにこのころから仕掛けられていたのだ。

 6月26日深夜、アーバンコーポレイションは突如としてIRを出した。みんなが寝てる頃にこんな発表をするのはたいていろくなことがないのである。まともな企業ならもっとまともな時間に出している。深夜のIRでまともなものをオレは見たことがない。アーバンはなんとBNPパリバを引受先にして300億円のCB(転換社債型新株予約権付社債)の発行を発表したのである。引き受け価格は344円、これは6月26日の終値と同じ価格である。これ以上に株価が上昇すれば、BNPパリバは転換させた株券を売却して利益を得ることができるし、株価が上昇しなかったらそのまま償還期限まで持ち続けて利息を加えた額を受け取ればいいのである。ここで調達した資金は短期借入金の返済に充てるとされていた。アーバンコーポレイションが過去に発行した公募普通社債の格付けはBB格に格下げされていて、銀行からの資金調達は困難な状況にあったため、外資から資金を調達して乗り切ろうとしたのである。


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08月14日(木)
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