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江草 乗の言いたい放題
by 江草 乗
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■命をかけて真実を伝えるということ
軍事政権の支配下にあるミャンマーでは国民の人権など保障されていない。反政府デモが起きれば射殺して鎮圧することが軍にとっての正義であり、我々の持つ価値観は全く通用しない。そんな国で真実を伝えようとして活動することがどれだけ危険なことか。
長井さん、至近距離から銃撃…TV映像などで明らかに
【バンコク=田原徳容】ミャンマー軍事政権による反政府デモ弾圧を取材中に死亡したニュースプロダクション「APF通信社」(東京都港区)の契約記者、長井健司さん(50)が、軍用トラックから飛び降り、走ってきた武装兵士に、数メートルの至近距離から撃たれていたことが28日、米テレビCNNなどが放映した映像で明らかになった。
ヤンゴン中心部のスーレ・パゴダ(仏塔)付近の路上で、あおむけに倒れた長井さんが、右手に握りしめたカメラは、逃げる市民を追うかのように、その背中に向けられた。だが、武装兵士はかすかに腕を動かす長井さんのそばを無情に通り抜け、デモ隊を追い続けた。
軍政は、デモが最も頻繁なこの地区を厳重警戒しており、特別な訓練を受けた精鋭部隊が任務に当たっているとされる。
また、軍政は外国メディアの報道ぶりを「邪悪」とし、取材ビザの発給申請を拒絶するとともに、国内での監視を強化している。(2007年9月28日22時54分 読売新聞)
長井さんはなぜ無惨な殺され方をしたのか。それはミャンマー軍事政権の暴走ぶりを世界に伝えられたくなかったからであり、彼がこの真実を世界に伝えようとしていたから見せしめのように殺されたのだ。「事実を報道すると殺す!」という一つのアピールとして、他の誰でもなく長井健司さんを至近距離から射殺したのである。この死は、ミャンマー軍政が報道というものに対して示した一つの意思表示である。「これがオレ達のやり方だ。どうだ文句あるのか」とミャンマー軍政は世界に示したのだ。日本政府はこの事実を踏まえた上で彼らとの対決姿勢を打ち出すべきである。オレはアメリカがイラクを攻撃してフセインを殺したのは正義でもなんでもなくただの侵略戦争だと思ってるが、日本の自衛隊が出動してミャンマーの軍事政権を倒すならそれは正義の戦いということで支持するだろう。
テレビで大勢の僧侶たちの姿を見て、オレはあの不朽の名作「ビルマの竪琴」を思い出した。「おーい水島、一緒に日本に帰ろう」と呼びかけることばに背を向けて、彼の地で戦没した兵士たちの供養のために祈りを捧げる若者の物語である。ミャンマーの反政府デモには大勢の僧侶が加わっている。もちろん軍事政権は僧侶たちにも激しい弾圧を加えて寺院を破壊したりしているのだ。
ミャンマー軍事政権の後ろ盾となってるのは中国である。中国といえばあの天安門事件でもわかるように市民に向けて発砲することなど何とも思っていない人権意識の希薄な国である。この暴走を止めることができるのは中国しかないわけだが、中国政府にしても自分たちと同じことをしているだけのミャンマー軍事政権を止める大義名分がないわけで、アメリカから催促されても全くやる気がない様子だ。しかも中国はパイプラインを通じてミャンマー経由での天然ガス供給を受けているわけで、このミャンマー経由ルートはマラッカ海峡を通過しないで中東の原油を手に入れることができる可能性につながるいわば中国経済の生命線なのである。それだけにどうも態度が煮え切らないのだ。
危険な場所にわざわざ出かけていって、そこで貴重な映像や記録を手に入れることがたとえジャーナリストの使命であるとしても、その危険な行為を誰もができるわけではない。命の危険が伴うそんな現場に行きたくないのが普通の感覚だ。しかし、これまでイラクやアフガニスタンを取材してきた長井さんは、今回のミャンマー取材もためらいなく決めたのだろう。まさか軍事政権が他国の報道記者を殺してまでも真実が報道されないようにするなんてこと、誰が予測できただろうか。
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09月29日(土)
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