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江草 乗の言いたい放題
by 江草 乗
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■ハメこまれた人たち17(アーバンコーポレイション)
さて、この日の民事再生の報告と同時に1Qの決算報告もあった。それはもう言葉にできないほどの無惨な内容だった。ここまで棚卸し資産の価値が毀損していたのかと唖然とさせられる内容だったのだが、もう一つ重要な報告があった。それは7月4日には伏せられていたものである。そして、投資家たちがその事実を知っていたら決してこの銘柄を買いはしなかっただろうという重要な事実である。それがなんと民事再生と同時に発表されたのである。それはBNPパリバとの間に交わされたスワップ契約だった。契約条項の中でこの事実だけは開示されていなかったのだ。パリバが高値で売り抜けるために、この事実は投資家たちに隠されていたのである。本来7月4日に開示すべき情報は、一ヶ月以上も遅れて開示されたのだ。それは、入金されたはずの300億円はすぐにパリバに返却され、株価が転換価格、あるいは250円(後に175円)を上回った時にだけ少しずつアーバン側に支払われるという契約だったのだ。実際にアーバンが受け取れたのは92億円だけであり、一方パリバは空売りでしっかりと稼いでいたのである。パリバは絶対に損をしないようにこのスワップ契約を付けていたのである。こうしてアーバンが300億円を短期借入金の返済に充てるという目論見は崩壊ししたのである。
なぜこのシナリオが狂ったのか。7月4日の「担保株処分」による急落さえなかったら、もしかしたらBNPパリバの転換は344円よりも上で行われていたも知れない。あるいはその担保株売却は、破綻を事前に察知した金融機関が自己防衛のために仕掛けたのかも知れない。そのあたりを結果論で語っても仕方がないのだが、今回の2008年最大の破綻劇の被害者は、アーバンにゼニを踏み倒された銀行やゼネコンではなくて、だまされて紙切れになる株券を買わされた多くの個人投資家である。重要な情報をわざと開示させずに投資家の錯誤を誘い、高値で売り抜けることによって巨額の利益を得たBNPパリバと、その詐欺の片棒を担いだアーバンコーポレイションが起こした詐欺事件だとオレは認識している。
こんなことをアメリカでもしもやれば20年くらいの実刑判決を食らうだろう。しかしそこは刑罰の甘い日本である。しかも証券取引法事態が全くいいかげんなのである。オレはホリエモンが実刑でライブドアが上場廃止なのに、その10倍以上の金額のイカサマをやっていた日興コーディアルがお咎めなしというのが信じられないのである。そんな不公正な日本市場なら、どんな犯罪をやってもイカサマをやっても平気だと外資の連中は思ってるだろう。
株式市場は大きな賭場みたいなものである。そこにはイカサマもあればインサイダーもある。立件されるのはそのうちのほんのわずかである。たとえばアーバンコーポレイションのメインバンクである広島銀行の債権額は200億円、今回の破綻による損害は約50億円であり、年間の利益の半分が吹っ飛ぶことになる。なぜか今日8月13日、急落した広島銀行株には100万株以上の空売りが行われているのである。この異常に多い空売りの発生をどう説明するのか。これはアーバンコーポレイションがその日に破綻することを事前に知った誰かが、短期で利益を得るために大量の空売りを入れたからではないか。そうでないとあまりにもこの空売りの多さは不自然である。
そのイカサマだらけの賭場で勝つために、弱小個人投資家のオレはいつも必死なのである。
08月14日(木)
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