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江草 乗の言いたい放題
by 江草 乗
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■ハメこまれた人たち17(アーバンコーポレイション)
さて、CBは本当に発行されるのか。300億円は入金されるのか。その思惑で乱高下していた動きに終止符を打つように7月10日の朝にニュースが出た。アーバンコーポレイションの経営企画部の寺敷信昭氏が「8日付で仏BNPパリバとCBの買取契約を締結」と発表したのである。これを受けて株価は207円からストップ高手前の286円まで上昇し、248円で引けた。翌11日も268円まで上がったが引け値は218円だった。なぜストップ高にならなかったのか。なぜ上昇したときに大量の売り物が出たのか。誰が上で売っていたのか。7月11日には「300億円の入金を確認」という寺敷氏の発表があった。この時、実は寺敷氏は重大な事実をわざと隠していたのである。株主に開示しなければならない情報の中で大切な部分、つまりこの300億円の入金に関する重要な契約事項はこのときは隠されていたのだ。その隠された事実は8月13日になって判明するのである。もしもそれが投資家に開示されていたならば、この後に起きる悲劇も発生しなかっただろうし、こんなに多くの投資家を巻き込むこともなかったのである。
7月10日、11日両日の出来高も1億5000万株を超えていたのである。これだけ多くの出来高があるということはそれだけ多くの投資家が参加していたということである。7月11日の朝、ソフトバンクがレンタルしている株ケータイ(SBI証券にワンプッシュで接続できる専用携帯電話)に搭載されているアプリの「株ケー倶楽部」の推奨穴株では、なんとこのアーバンコーポレイションを推奨していたのだ。それを見て買った個人投資家もかなりいたはずである。
さて、銀行に担保株を売却されてしまった房園社長だが、その後都内に所有する豪華な邸宅などの個人資産を次々に売却していたことも判明した。また7月10日に房園社長があわてて提出した大量保有報告書は合計18本もあったのだが、そのほとんどは担保契約の変更に関するもので、中には報告義務の発生日が2,3年前のものまであった。長期間にわたって持ち株を担保に提供していたことを房園社長は全く報告していなかったのである。何のために個人資産を売却したのか。オレの予想ではただ単に現金化して隠したかっただけのような気がするのである。
7月14日の終値は200円だった。しかし、この日時間外で3600万株が200円で取引されていた。この動きがいったいどういうものなのか、おそらくは10日、11日の上値を抑えていた空売り玉の返済用に買われたのではないかとオレは想像するのである。誰が250円以上で空売りしていたのか。あそこで上値を抑えていたのは誰なのか。後に提出された大量保有報告書からBNPパリバが空売りしていた可能性が高い。
7月16日、アーバンコーポレイションは広島大学の跡地の取得の再延期を発表した。再開発のために取得する予定だったのが、資金繰りが悪化して払い込みができなくなったからである。4月にも数ヶ月の延期を広島市に申し入れしていたのだが、さらに延期を発表したのである。360億円といわれる総事業費を金融機関から調達できる目処がなくなったからである。不動産市況の低迷や資材価格の高騰という理由がつけられていたが、実際はもう企業として存続できるかどうかの瀬戸際だったのだ。
もうこの時期には多くの投資家にとって「アーバン倒産」という可能性はもはや疑いのないものになっていたようである。それは2ちゃんねるの株式市況板に建てられたスレッドのタイトルが【8868】アボーンコーポレーション(終)【ゼファー2】になっていたことからもわかる。その一方で「もしも倒産しなかったらこの株価はバーゲン価格だ!」と信じる投資家もいた。だから連日出来高は数千万株を超え、1億株以上取引される日もあったのである。株価は緩やかに落下し続けたのだが。
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08月14日(木)
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