ID:41506
江草 乗の言いたい放題
by 江草 乗
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■サドルになりたかった少年
 そんな彼の至福の時は、突然に終わりを告げた。自転車置き場には入り口が二つあって、自転車を置いた生徒はロッカーに近い方の入り口へと向かうという関係で、そっちの入り口だけしか通常は人が出入りしない。だからオレはその入り口の方向からの視線だけをさえぎればよかったのである。まさかもう一方の入り口から、そのサドルの持ち主の女子生徒が突然入ってくるなんて思いもよらなかったのだ。

「きゃああああああああ」

 その悲鳴は周囲に響き渡った。彼がサドルの匂いをかいで至福の時を迎えていたのを、そのサドルの持ち主の女子生徒が目撃してしまったのだ。自分のサドルの匂いを懸命にかいでいる変態を許せるような寛大な女性がどこにいるだろうか。ただ、オレは卑怯にも「どうすれば自分は変態の仲間と思われないか」という自己保身だけを考えていた。だからそこでオレは突然彼を裏切ったのだ。たった今振り向いて気づいたという芝居をしたのである。

「うわっ、こいつ変態やん!」

 彼は激しくその女子から叱責されることとなった。オレは共犯者でありながら全くクールに振る舞い、変態仲間にされることを免れた。オレは一度もサドルの匂いをかがなかったから、そういう意味では変態ではないのだが、彼の変態行為をやめさせなかったという責任は友人のオレにもある。本来なら共犯者として彼女の責めを受けるべき自分は、彼を変態呼ばわりすることでその責めを免れたのである。

 今でもオレは、スカートをすっぽりとサドルにかぶせて自転車に乗ってる女子中学生や女子高生を見るとサドルの彼のことを思い出す。「ぼくはサドルになりたい」と語った彼は今はどうしているだろうか。念願叶ってサドルになれたのだろうか。

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07月23日(金)
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