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江草 乗の言いたい放題
by 江草 乗
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■ハメこまれた人たち17(アーバンコーポレイション)
もしもその300億円分のCBがすべて株式に転換されたとしたら38%も希薄化してしまうことになる。これは既存の株主にとってはかなりのダメージである。会社の価値はそのままで単純に株券だけが増えると言うことだからである。それを受けて翌27日の株価は339円で寄りついたが大きく下げて298(−46)円で引けたのである。しかし、CB発行の二日前、つまり24日の株価は419円だった。CB発行発表前の二日間ですでに大きく値下がりしていたのである。これは事前に情報を知る誰かが、あるいはこのCBを引き受ける側の外資が事前に空売りを仕掛けていたとしか考えられないのである。ただ世間ではその暴落の理由として、6月24日に破綻したスルガコーポレーションからの連想売りとみていたようである。それ以外の要素があったとは誰も思わなかったのだ。
翌週の株価は比較的安定していた。200円台半ばでゆるやかに下げ基調だった。大きな下げがやってきたのは週末、7月4日である。この日、アーバンコーポレイションの株価は大量の売り物が出ていきなりストップ安に張り付いた。なぜこんなに下がったのか。誰が売ったのか。この時点では誰もわかっていなかったのだ。引けに掛けて少し戻したもののその日は189(−74)円だった。この暴落に関してさまざまな憶測が流れた。その中でも有力だったのは、300億円のCB引き受けが中止になったというものだった。もしもこのCBが転換価格変動型のMSCBだったのなら株価が下がっても問題はない。その分引受先の手に入れる株数が増えるだけだからである。しかし、転換価格を344円に固定しているCBならば、株価が暴落した状態では引受先のBNPパリバは利益を出せないことになる。だったらこの話自体が流れてしまったのではないか・・・と予想する者もいた。その一方で年間配当25円ということで値下がりした今がチャンスと思って購入する個人投資家もいたのである。倒産懸念で暴落している株を配当目当てで購入するとはなんと無謀な行為だろうか。そもそも株価が1/10にも下がってることにはちゃんと理由があるのだ。そんな銘柄に断じて割安株などはないのである。
週が明けて7月7日になって、一時は168円まで下げた株価は今度は217(+28)円に上昇した。4日の暴落の理由も明らかになった。アーバンコーポレイションの房園社長が個人として金融機関9社に担保提供していた株式の内、6社の金融機関が担保権を実行して売却していたことがわかったのである。この結果、筆頭株主だった房園氏の保有率は16.6%から4%に低下した。大株主が不在になったのである。しかし個人投資家の多くはこの時点でアーバンコーポレーション株を「買い」と判断した。金融機関の強制売却によって下げただけであること。また、引受先のBNPパリバが利益を出すために必ず344円以上の相場にしてくるだろうと期待したことがその判断の根拠である。7月7日の出来高は1億5000万株を超えた。一日の出来高が20億株ほどしかないくらいに閑散としている東証で、その1割近い取引がこのアーバンコーポレイション株に集中したのである。最後に大きな売り物が出て急落したものの、この日の株価は一時はストップ高寸前まで上昇したのである。その派手な値動きを見て多くの個人投資家が集まってきたのだ。
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08月14日(木)
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