ID:41506
江草 乗の言いたい放題
by 江草 乗
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■どうか、その子を殺さないでください
 どうか、幼な子の命を奪わないでくれ。あなたが手に掛けて殺そうとするとき、あなたはわが子の目を見つめることができるか。必死で生きようとしている子どもの叫びがあなたには聞こえるのか。

 日本のどこかで不慮の事故で命を落とす子どもたちがいる。ため池で転落死したり、突如増水した川に飲み込まれて流されたり、暴走してきたトラックにはねられたり、そうした子どもたちの中で、自分が死ぬことを受け入れていた子どもなど一人も居ないはずだ。みんな理不尽に襲ってきたその運命に驚き、必死で抵抗し、それでも命が尽きたのである。その無念さがわかるだろうか。そこで断ち切られてしまう可能性がどれほどかけがえのない大切なものなのか、今その手で我が子を殺そうとしているあなたにはわかるのか。

 どうか、必死で生きようとしている我が子を殺そうとした行為の罪深さに気がついてくれ。自分が死のうとしたことの愚かさにも気がついてくれるならなおいいのだが。我々が宿命的に所有している一回の限定された生を奪い取る行為は、生そのものの意味に対する冒涜である。いかにその生の現実が苦悩に満ちた困難なものであったとしても、一回性ゆえにその生は輝くべきはずのものではないのか。自分が手にいれた生と全く同じ生を共有する人は誰もいない。自分が生きている生はかけがえのないただ一つの生である。だからこそ、人はその生をよりよく生きるための努力を欠かせてはいけないのである。人を殺すことがこの世でもっとも大きな罪である理由は、その行為によって奪われるものが今生きているという事実だけではなく、将来もその命が存在し、よりよく生きようとする可能性までも奪ってしまうからである。殺人というのは未来に対する一種のテロ行為なのだ。あなたが我が子を殺そうとしていることはこんなにも罪深いことなのだ。

 どうか、殺さないでくれ。原爆投下直後の広島で、我が子をかばって爆風の盾となりながら全身にガラスが刺さって血まみれになって死んだ母親をあなたは知ってるか。東京大空襲の猛火の中でどんなに多くの母親が子どもを強く抱いたまま焼けこげた死体となったことだろうか。たとえあなたが死んでも命をかけて守らなければならない対象が我が子ではないのか。それをどうして殺すのか。オレはその理不尽さを訴える。このような悲劇が二度と繰り返されないようにとここで書かずにはいられない。

追記:人生の一回性については、「100万回生きたねこ・試論」の中で触れています。ぜひごらんになってください。

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08月05日(火)
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