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江草 乗の言いたい放題
by 江草 乗
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■時津風部屋、死のシゴキ
無くなった斎藤俊さんには身体中に無数の傷があったという。変わり果てた姿で帰ってきた息子を前にして、父親の正人さんはどう思っただろうか。俊さんは家にSOSを発信していた。何度も逃げ出そうとして、そして「帰りたい」という旨を父親に伝えていたのに、父の正人さんは「もう少しがんばれ」と答えていたという。もしもそこで助けに行けば息子を救うことが出来たかも知れなかったという思いは、これから先も父の正人さんを苦しめることだろう。しかし、どうやってそれを知り得ただろうか。
相撲部屋という閉鎖空間の密室の中で行われるシゴキという名のリンチを我々は想像することしかできない。それがどれだけ陰惨なものであったかは今後の捜査の中で明らかにされるはずだが、身体にはタバコの火を押しつけられて出来た火傷の痕もあったらしい。相撲という全身の肌をさらす競技でそういう傷があればすぐに不審に思われるはずだ。どうもオレには腑に落ちないのである。
相撲を希望する若者は減少している。新弟子のなり手がないので外国人をスカウトしたりする結果につながってるのだが、なぜ相撲を希望しないのか。その理由は今回のリンチでも明らかになったその世界の閉鎖性と硬直性にあるのではないか。絶対的権力者である親方の指示に従わない者は暴力で服従させるという実態が若者の相撲離れにつながったのではないか。
もちろん強くなるためにはある程度の厳しさも必要だろう。努力しないで強くなれるほど相撲の世界は甘くない。それはオレにも理解できる。厳しくしないと稽古の成果も上がらないし、何より強くなれない。体力の限界寸前まで肉体をいじめ抜かないと強くなることはできないだろう。そんな世界に飛び込んできた17歳の少年は少なくとも相撲の世界にやってくるまでは普通の若者の世界で生きる少年だったはずだ。さまざまな夢を抱いて相撲という世界で出世しようとして、より高いステージを目指そうとして入門してきた彼は、まさか序の口のままで自分が17歳の生涯を終えようとは夢にも思わなかったはずだ。斎藤俊さんが殺された日の出来事はこのように報道されている。
これまでの調べでは、死亡前日の6月25日午前、斉藤さんが部屋から逃げ出そうとしたところ、兄弟子らに連れ戻され、同日夕、親方からビール瓶で額を殴られたほか、兄弟子らから「指導」の名目で数十分にわたって殴るけるの暴行を加えられたという。県警は、兄弟子らが日常的に暴行を繰り返していた可能性もあるとみている。
逃亡罪で死のリンチなのか。まるで軍隊並みだぜ。オレはこのリンチがその時に突発的に起きたものであるとは思えない。おそらくこの時津風イジメ部屋では、おそらく最年少と思われるこの斎藤俊さんをみんなでリンチすることが、毎日の習慣になっていたのではないだろうか。その辛い日々に耐えかねて彼は逃亡を選び、その命を賭けた逃避行に失敗して連れ戻され、無惨にも殺されたのだ。彼と家族をつなぐ糸だった携帯電話は無惨にもへし折られたのだ。しごきという名のリンチで人を殺す。そんな犯罪行為が存在する相撲という世界をこのまま存続させるのか。朝青龍もモンゴルへ帰っているわけだ。もうこの際相撲という競技を廃止したらどうだ。日本人力士が横綱をとれないような状況で続けようとすることも却って恥の上塗りをしてるようなものだろう。だったらこの際思い切って廃止して、名力士は過去の記憶の中にだけ存在するということにすればいい。相撲そのものを廃止してしまう以外に、相撲部屋の中に存在するイジメ体質の解決方法があるとはオレには思えないのである。
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09月27日(木)
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