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サッカー観戦日記
by T.K.
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■信州ダービー J3松本山雅−長野パルセイロ探訪記
Jリーグは良くも悪くも成熟し、一定の型がある。ダービーマッチになれば公式が煽っていることもあって双方過剰というか憎悪にも似た感情が飛び交う。地元大阪でいえばガンバとセレッソは元来松下とヤンマーに敵対意識はなかったし、北摂と大阪南部も特段対立意識はなかったが、今ではすっかり仕上がり、敵対意識ごっこというより本気で相手を嫌う関係になっている。これは観客動員という意味では幸いだが、ビギナーには敷居が高く、サッカーの悪い面も出てしまう関係になっている。つまり会場までの往復の車内の空気は良いとは言えない。欧州のノリをJリーグに持ち込む古参サポーターがすべて悪いとは言わない。彼らがJリーグの隆盛に大きく貢献したのは確かだから。ただ時代の要請はファミリー層を含めて誰もが観戦を楽しめる、緩いエンタメ観戦文化である。フットボールを熱心に応援する文化ではなく、観戦もその一部に過ぎないような、食べて飲んでマスコットを愛でて場内の雰囲気を楽しむ時間を過ごすだけの新しい文化が求められている。そういう中でのダービーは双方プロレスごっこ以上の対立がない、チーム力以上に双方の地域へのリスペクトがある、平和的で誰もが来られるダービーが求められている。そしてそれが体現されていると言われているのが信州ダービー、つまり今期でいえばJ3松本山雅対長野パルセイロである。現在の長野県と言われる信州の地域は山々に阻まれ各地にそれなりに大きな町があり、かつては北信越リーグに様々なチームがあった。長野エルザ、松本山雅、茅野チェルシー、上田ジェンシャン、アンテロープといった面々である。その中からプロに収斂していき、Jリーグクラブにまで成長したのが松本山雅と長野パルセイロ(元長野エルザ)である。地獄の北信越と言われた、今のJクラブだらけだった時代の北信越リーグは観ていないが、長野県全盛時代だとか、YKK対北陸電力(後に合併してカターレ富山)だとかは観ている。その後福井のゲームにも足を運んでいる。で、長野県がプロは2クラブに収斂したのは都市にそれだけの力があったからだが、力があるのには理由がある。長野県の歴史、つまり長野市と松本市はもともと異なる県であり、善光寺の門前町の長野市と松本城の城下町の松本市では根本的に経済構造も気質も違い、つまり地政学的な対立が不可避と言えば過言だが、少なくとも対立構造がある。一方長野県はフットボールマッドな土地柄ではなかった。高校バスケは全国制覇経験があるが。高校サッカーでは昔松本県が丘高校が全国ベスト4経験があるが、県内が盛り上がったとも思えない。クラブジュニアユース選手権が長野県開催の時代も会場はのどかだった。Jリーグでも後発である。そういう意味で長野県のフットボールファンは良くも悪くも「初心」であり、未見だったダービーマッチもピュアなフットボール熱に満ちた雰囲気ではないかと予想した。


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06月29日(土)
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