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Ship Building
by コーヒー
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■The Sign of Heaven
彼との約束通り、今日は朝から話し合った。
彼は、彼なりに、入籍への最短ルートとなるよう、諸々考えて行動していた。
だから同棲してお互いが本当に結婚相手にふさわしいかどうかを見たいなどの提案をしたという。
けれど、僕が無意識のうちにトラブルを起こしてしまう。
しかも次々と、何度も同じことを。
彼はそれに疲弊するたび、本当に入籍してもいいのか?と毎度考え直させられていたとのこと。
どうやったらこの先も楽しく生活していけるんだろう、と。
僕の生まれ持った障害は、現代の医療レベルだと一生治せないもの。
けれど、彼の説得を受けて、僕は治療を再開した。
いつかきっとよくなる、と信じて。
でも、その日を待っていては、入籍なんてきっと一生無理。
それはわかっている。
彼も僕も。
ふたりとも黙り込んだ。
重苦しい雰囲気の中……彼が紙を取り出し、サインをしてくれた。
本当に渋々、だった。
僕はこの日をどんなに待ちわびたことか。
その瞬間は、きっと天にも昇るような気持ちなんだろうなって、ずっと思ってた。
けれど、実際、その日ってのは……本当にどんよりとした雰囲気で、想像していたそれには、程遠かった。
ひょっとすると天国ってのは、僕らが夢見ているものとは全然違うのかもしれない。
そう思えるような、朝のひとときだった。
僕は受け取った紙を、その日のうちに出さないことにした。
ゲン担ぎのために、お日柄の良い日に出そう。
02月28日(土)
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