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Ship Building
by コーヒー
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■泣いた
それは、ごくごくつまらない理由だった。
久しぶりすぎて操作方法がよくわからないゲーム。
どうスタートさせればいいかわからなくて。
skypeで操作を聞こうにもゲームの音量が大きすぎて。
設定をいじっている間に、ゲームがスタートしてしまっていた。
ひとりだけ、置いていかれた。
瞬間、ものすごい勢いで巻き戻される記憶のテープ。
幼い頃のコーヒーがそこにいた。
習い事からの帰りが遅くて、独りだけ買い物に連れていってもらえなかったっけ。
弟ばかりが可愛がられて、家に居場所がなかったっけ。
結婚前のコーヒーがそこにいた。
マリッジブルーにかかって不安でいっぱいだったのに、ずっと放っておかれたっけ。
なのにあのひとは毎晩友達と遊びに行ってたっけ。
不安になって鳴らした携帯にも出てくれなかったっけ。
離婚前のコーヒーがそこにいた。
いつもコーヒーのことばかり考えてるって、あのひとはずっと自分勝手だったっけ。
ふたり一緒に住んでいたはずなのに、こころは独りだったっけ。
煙草と一緒に住んでた頃のコーヒーがそこにいた。
MMORPGにはまった煙草が、どんどん遠くなっていったっけ。
最後には名前も呼んでくれなくなったっけ。
独りじゃないのに、独り。
あんな思いは、もう嫌。
急いでゲームをログアウトした。
寝ると言って回線を切断した。
でも、記憶のテープがエンドレスで再生されて、眠れなかった。
彼に電話した。
どうして待ってくれなかったの。
音量を下げたいから、操作がわからないから教えてと言ったのに。
勝手にスタートしちゃうなんてひどい。
独りにしないで。
独りはもう嫌。
まるで駄々っ子のように彼に当たって。
うわあぁぁん。
そして彼の前で大泣きした。
「こんなことで泣くな、恥ずかしいだろ?」
コーヒーはもう、子供そのものだった。
きっと、買い物に連れて行ってもらえなかった頃まで、幼児退行していた。
痛くて痛くて、涙が止まらなかった。
「わかった、わかったから。
ごめんな」
その一言で、記憶のテープの再生はぴたりと止まった。
同時にコーヒーの涙も止まった。
たとえその「ごめん」が、コーヒーを泣き止ませるだけの口から出任せだったとしても。
ほんの一瞬のうちに、随分と落ち着いた。
電話の後はすぐに寝付くことができ、夢も見ないくらい安眠できた。
あの時コーヒーがほしかったのは「ごめん」の一言だったんだね。
このところずっと、子供みたいになっては彼を困らせてばかりだった。
彼にはついつい甘えすぎてしまう。
彼に謝らないといけない。
大事な彼に、嫌われたくないもの。
01月31日(火)
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