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たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■日本人は世界で一番他人に冷たい国民性
テレビのニュースでも取り上げられていた話題で、日本人は見知らぬ他人が困っていても助けない、という話であります。

CAF WORLD GIVING INDEX 10th edition
https://www.cafonline.org/about-us/publications/2019-publications

Charities Aid Foundationはイギリスにある国際的な慈善団体で、世界各国で人々がどれぐらい慈善行為を行っているか調査を行い、それを慈善指数(World Giving Index)として数値化しています。調査を請け負っているのはギャラップという調査会社で、調査の内容は意外にシンプルで、以下の三つの項目のアンケートを行うものです。

あなたは、この一ヶ月の間に、以下の行いをしましたか?

 1.困っている見知らぬ人を助けてあげましたか?
 2.慈善や義援に金銭を寄付しましたか?
 3.どこかの団体のボランティアに時間を使いましたか?

あなたはどうでしょうか? 「この一ヶ月以内に」という条件がついているので、僕はタイミングによっては、三つともノーという返事になることもしばしばありそうです。

この三つの質問を、百以上の国について、各国およそ千件の回答が集めながら、毎年10年間続けたというのだから、大規模な調査です。

そして、気になる結果ですが、日本は

 1.24%(125位で最下位)
 2.23%(64位)
 3.22%(46位)
 総合 23%(107位)

近年日本では大規模な災害が相次ぎ、義援金を送ったり、片付けや人捜しのボランティアに参加する人が増えたと聞きますから、それが2と3の項目が真ん中ぐらいの結果をもたらしたのでしょうか。

しかし、1の項目が世界で最下位なのです。いやいやいやいや・・、日本人は礼儀正しく、自己主張控えめで、人の気持ちを慮り、そして人に親切にするのを美徳とする文化を持っていたのではなかったのか?

私たちのその自己意識は間違っていたのでしょうか?

1の質問では、困っているのが「見知らぬ人(a stranger, or someone you didn't know)」となっているのがポイントです。つまり、日本人は知り合いには親切かも知れないが、見知らぬ人には冷たいというわけです。

ちなみに、総合順位でトップだったのは(なんと!)アメリカで、1の質問でも72%という数字を出しています。

多くの人は、アメリカ人は個人主義的で自己主張が強く、一方で日本人は集団主義的で自分を抑えて生きていると考えています。

そこから、アメリカ人は個人主義的だから、人のやることに余計な口も挟まないけれど、こちらが困っていても助けてくれない(冷たい)のじゃないか、とか・・・日本人は集団主義的だから、人のことにとやかくうるさいけれど、困っているときには助けてくれるのだ・・・という推論を組み立てることも可能だし、実際そう信じている人も多いみたいです。

でも、それって本当でしょうか?

北海道大学教授だった社会心理学者の山岸俊男という人が、いろいろな心理学的実験を行い、日本人が実は個人主義的(というか自己中心)だということを示しています。その詳しい中身については『信頼の構造』など彼の著書をあたってもらうことにして、日本人が個人主義だということを受け入れて考えると、「日本人は親切」という自己意識と、現実の数字のギャップが見えてきます。

困っている人が自分の知り合いだったら、冷たくしてしまうと、後でその人にこちらの悪い評判を流されかねません(しっぺ返しを受けないように親切にする)。しかし、困っているのが見知らぬ人で、見捨てたところで自分に不利益がない(あるいは知り合い相手でも、自分の選択が相手にバレない)のなら、相手を助けないという選択をする(確率が高い)、というわけです。

つまり、日本人は根本的には自分勝手なのだけれど、集団の圧力や社会的証明の圧力によって、望ましいとされる行いを選んでいるに過ぎないわけです。実際に困っている人がいても「あれは自己責任だから助けなくて良い」という論調が出てきがちなのは、そのあたりに理由があるのかもしれませんね。


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11月15日(金)
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