ID:19200
たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■翻訳企画:AAの回復率(その3)
次のセクションでは「AAに参加した人の1年後の回復率は5%である」という誤解の中身に切り込んでいきます。

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b) 最初の1年の保持率

1990年に発行された、1977〜89年のAAメンバー調査の概要報告書にある図C-1
1990年に発行された、1977〜89年のAAメンバー調査の概要報告書にある図C-1

一部の論者たちが示す現在のAAへの悲観的な見方は、上に掲げた図の誤った解釈に基づいている。この図は1990年に作成された、それまでのメンバー調査についてのGSOの内部報告文書から引用したものである。この報告書の誤った解釈がこれまで広く拡散されてきた。このグラフには「AAにやってきて最初の1年の人たちが各ヶ月後に何%残っているか」という不適切なタイトルがつけられている。この図は、1990年のGSO内部レポートの12ページにある図C-1である。

この手書きのグラフは、現在のAAが5%の成功率しか達成していないという誤った主張の中核となっている。一番下に書かれたパーセンテージの数列では、その右端のX軸の12ヶ月目のところに5%と書かれている。この5%という数字が、新参者がAAに1年間居続けることができるパーセンテージであると誤って解釈されているが、そうした解釈は5%という数字が実際に示す意味としてはまったく正しくない。ここでは、このグラフの元となったデータとグラフの成り立ちを考慮した上で、(最も重要な)このグラフがどのように解釈されるべきかを論じていく。

図C-1にプロットされたデータは、それまでに行われたすべてのメンバー調査中のある部分集合の人数を示している。その部分集合は、AAに初めてやってきてから1年以内の人たちである。X軸はAAに初めてやってきた時から12ヶ月目までの時間の経過を示している。プロットされている点は、5回のメンバー調査それぞれについて、(初めてAAに参加してから)経過期間ごとの人数がこの部分集合中に占める比率を示している。

下記はこのGSOの内部報告書におけるグラフの説明の引用である。

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付録C:最初の1年

回答された調査票から、月単位でその月数まで(AAに)「留まっていた」メンバーの数を集計することができる。これは調査票の中の、AAに初めてやってきたのは何年何月か、を尋ねる質問から得られる。
過去5回の調査それぞれについて、最初の1年の12ヶ月について集計したものを、図C-1にプロットした。この結果は、メンバーがAA共同体内にその月数とどまっている確率を示していると解釈して良いだろう。

より明確にすると:AA共同体に加わって1ヶ月未満のメンバーが、1ヶ月後も全員とどまり続けたとすれば、1ヶ月と2ヶ月のメンバーの数は等しくなるはずであるが、1ヶ月後には減少していることが分かる。もちろん月ごとの変動は季節効果の影響を受けて波が生じ得るし、その後の月についても同様である。

ではあるものの、グラフからははっきりとした傾斜が読み取れる(季節変動の影響があったとしても)。
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「この結果は、一定の月数が経過した後にメンバーがAA共同体に留まっている確率を示していると解釈できる」と述べられている。それがいかなる可能性なのかは、図C-1の表現の中には示されていない。

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付録C続き: 図C-1はこれまでに行われた5回の調査について、その結果に注目すべき類似があることを示している。5回の調査はそれぞれの規模の違いを考慮に入れて同じスケールで表示している。5回の調査の平均値を表にしてあるが、この表の数値はAAに来た者のおよそ半数が3ヶ月以内に去ることを強く示唆している。あいにくなことに、そのような脱落がなぜ起こるのかという理由をこの表から読み取る方法はない。
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01月26日(月)
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