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たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■変化への備え
依存症の人たちは「回復」という言葉を使います。回復とは何かを定義するのは難しいのですが、少なくとも「回復には変化が含まれる」ことは確かです。何も変えないで回復を得ることはあり得ないわけで、自分の中の何かが変わることが必要です。
「自分は、自分のままでいい」と言ってくれるやり方もありますが、そう言いながらも(中身を良く読んでみれば)自分を変えることを求めていることが分かります。
では私たちは、どうやって自分を変えたらよいのでしょうか?
Joe and Charlie の中に、「車を買い換えようと思うときに、あなたが一番最初にすることは何か?」という例え話が出てきます。車を持っていない人は、携帯電話でも、パソコンでも、冷蔵庫でも、何でもいま自分が持っているものを思い浮かべて、それを買い換える場面を想像してもらえばよいです。
多くの人の答えは、お金を用意すること(そのために宝くじを買う?)だったり、お店に行って車種を選ぶことだったりします。しかし、それよりもっと前にしなければならないことがあります。
それは「いま乗っている古い車を諦めること」です。オイルやタイヤを換えてみたら、まだまだ大丈夫じゃないか・・と思っているうちは、人は新しい車を買うことはありません。いまの車に乗り続けることをギブアップしてから、ようやく違うものを手に入れる行動が始まるのです。
同じことは自分自身についても言えます。自分が変わるためには、今のままの自分でいることにギブアップする必要があります。そのためには、過去に自分が積み上げてきた何かの価値を否定する必要も出てきます。
アルコホーリクが酒をやめるときについても、同じことは言えます。「まだまだ俺は酒を飲み続けても生きていける。大丈夫だ」と思っているうちは、酒をやめようとはしませんし、やめることによって得られる新しい幸せを得ることもありません。酒の種類や飲む場所を工夫して飲み続けることでしょう。その人にとって飲むことは価値があるのでしょうが、その価値を諦めることがまず必要です。
僕は年に何回か、ビッグブックに書かれた12ステップを1〜2日かけて説明するという企画に参加しています。ビッグブック(つまりアルコホーリクス・アノニマスという名の本)に書かれた12ステップにはいろいろな特徴がありますが、その一つはステップ4の棚卸表を「表形式」で書くことです。具体的にはp.94〜95にサンプルがあります。
このやり方が日本で広がる前には、「ライフストーリー形式」と呼ばれる書き方が定着していました(もちろん今でもある)。こちらはノートに自分の人生の物語を書いていくものです。思い出せる限りの昔から現在に至るまで、出来事を書き連ねていきます。
なぜ日本でライフストーリー形式が広がったのか、正確な事情は分かりません。もともとアメリカで始まったAAには表形式の棚卸しのやり方しかなかったものが、時代が下るに連れて多様化していったようです。例えばネットで検索してみれば カリフォルニア式 なる棚卸しガイドが見つかります。5年以上回復を続けてから、この180個ぐらいの質問に答えていくのだそうです。これはハードルが高いですね。
多様化したやり方の中の一つがストーリー形式で、アメリカにもストーリー形式の棚卸しがあった(ある)のだそうです。そして、そのやり方「だけ」が日本に伝えられ、それ以外のやり方が伝わってこなかった、ということだと思われます。
僕もストーリー形式の棚卸しをやった経験がありますが、もちろんそれにも良い点があります。そのことは否定すべきではないと思います。では、表形式と同じ効果が得られるか、と聞かれれば、答えはノーです(キッパリ)。
ビッグブックのステップを扱ったイベントに来る人たちは、12ステップによる回復を求めている人たちなのだと思います(少なくとも回復に関心はある人たちです)。ではあるものの、その後、その人たちがそのやり方の12ステップに取り組むとは限りません。
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07月22日(火)
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