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たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■依存症は運転免許の欠格事由
昨夜はホームグループのミーティングでした。メンバーの一人が職業訓練を終えたので、お祝い?もあって久しぶりにアフターミーティングに行きました(ガストで飯を食いながら無駄話しただけですが)。
その中の話の一つが、てんかんであることを隠して運転免許を取ることに罰則を設ける、という話でした。
参考:持病原因の事故防げ 病状虚偽申告に罰則
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2012102502000233.html
病気を隠して運転免許を取得することに罰則がないからいけないのだ、という主張になっています。昨年栃木県でクレーン車が小学生の群れに突っ込んだ事件が背景にあるのは言うまでもありません。アフターで、そんな話がでるのは、この話がアルコール依存症と無縁ではないからです。
順を追って説明しましょう。
自動車運転免許は国家資格です。国家資格には、その根拠になる法律がありますが、その中に「これこれの者には資格を与えない」という欠格条項というものがあります。それに該当すると、試験に受かっても免許をもらえないか、そもそも試験を門前払いされてしまいます。
2002年の道路交通法改正以前は、運転免許の欠格事由はこんな風になっていました(法律の条文とは順番が違いますが)。
1. 資格年齢に満たない人。
2. 免許を取り消された日から起算して、指定された期間を経過していない人。
まあ当たり前の話です。
3. 身体に一定の障害のある人。
4. 精神病者、知的障害者、てんかん病者、目が見えない人、耳が聞こえない人、または口がきけない人。
5. アルコール、麻薬、大麻、アヘン、または覚せい剤の中毒者。
(他にもあるけど省略)
これらに該当すると、無条件に欠格となったので「絶対的欠格」と呼ばれます。ただ、実際には身体不自由以外は、それほど厳密に適用されていませんでした。法律は条文通りに運用されるわけではないという一例です。
2002年の道路交通法改正では、飲酒運転の厳罰化ばかりが話題にされましたが、同時に欠格条項も変更されました。「精神病者、知的障害者、てんかん病者、目が見えない人、耳が聞こえない人、または口がきけない人」というのが削除され、かわりに、幻覚の症状や、発作により意識障害・運動障害をもたらす病気の場合には、政令で定める基準に従って、免許を与えない「ことがある」、ということになりました。
「与えない」という絶対的欠格が、「与えないことがある」に変わったので、これを相対的欠格といいます。
その素案の段階では、法律の条文に具体的な病名が挙げられていました。Wikipediaによれば、その病名は
・統合失調症、双極性障害、躁病、重度だと判断されるうつ病、持続性の妄想障害
・てんかん
・ナルコレプシー
・脳虚血
・糖尿病
・睡眠時無呼吸症候群
だったそうです。素案を見た患者団体が、病名を法律に盛り込むと病気に対する偏見を助長しかねない、と反対して、具体的な病名は法律ではなく施行令(政令)に書かれることになりました。政令に書かれているのは、
・統合失調症
・てんかん
・再発性の失神
・無自覚性の低血糖症
・そううつ病
・重度の眠気の症状を呈する睡眠障害
・その他
です。もちろんそれが自動車の安全な運転の妨げになる場合、ということですけれど。それと「アルコール、麻薬、大麻、アヘン、または覚せい剤の中毒者」というのは削除されませんでしたが、絶対的欠格から相対的欠格へと移行しました。
で、てんかんの場合に免許を与えるかどうかの基準が、「過去2年間発作が起きてないから今後も発作の恐れがない」というような医師の診断書ということになりました。てんかんの人が免許を取得・更新するときには、質問票の中にある「病気を原因として又は原因は明らかでないが、意識を失ったことがある」という項目に○をつけることでてんかんを自己申告した上で、診断書を提出して許可を仰ぐ、という流れになります。
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10月26日(金)
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