ID:19200
たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■ADHDとASD(PDD)の重複
ブログのコメントで、発達障害の診断の国際問題の指摘をいただきました。
http://www.ieji.org/dilemma/2011/10/post-359.html#comments

・ADHD(注意欠陥・多動症)
・ASD(自閉症スペクトラム障害)/PDD(広汎性発達障害)

ADHDは「行動のコントロール」の障害、自閉症スペクトラム障害は「社会性」の障害です。ブログに掲載した概念図にあるとおり、この二つの障害は併存しうるものです。

二つの障害が重なっていると考えるよりは、一つの障害像を、行動のコントロールを軸に診断した場合にADHDと診断され、社会性を軸に診断した場合にアスペルガーやPDDNOSと診断される、と考えた方が分かりやすいです。

じゃあ重なっていた場合どう診断するのか。ルールは決まっていて、国際的な診断基準では自閉症スペクトラム障害が優先されます。つまりアスペルガー症候群やPDDNOSということになります。(実際に僕の知る人もそういう診断になっています)。これは、社会性の障害のほうがより深刻だからです。

しかしながら、アメリカにおいては話は違っていて、ADHDと診断されることが圧倒的に多いのだそうです。だから、同じ人がアメリカで診断を受ければADHD、日本で診断を受ければアスペルガー、となってしまうこともあるわけです。

この違いはどこから来るのか。ブログにコメントをいただいた方は、日米の文化の差を理由に挙げてらっしゃいました。

実は、杉山登志郎先生の「発達障害のいま」を読んでいるところです。この本はここ数年の新しい知見が紹介されているのですが、その中に診断の国際差のことも取り上げられていました。それによると、この違いは日米の健康保険制度の違いに起因するのだそうです。

ご存じのように日本は国民皆保険ですが、低負担低福祉の国アメリカはそうではありません。低所得者向けに最低限の医療を提供する保険制度はありますが、ふつうはおのおのが民間の保険に加入することになります。オバマ政権は国民皆保険を目指して制度を改革しようとしましたが、議会の反対で頓挫しました。

民間の保険会社は、長期にわたって保険金を払い続けることを嫌います(それが増加すると保険会社が潰れるから)。治療薬があるなら、それを使ってとっとと治療して欲しいわけですし、結果として治療薬がある病名が好まれることになります。

自閉症スペクトラム障害の薬物治療の研究も行われていますが、まだまだ良い薬は出てきていません。一方、ADHDは抗多動薬がよく効いてくれます。塩酸メチルフェニデート(リタリンやコンサータ)。またデパケンのような抗てんかん薬も使われています。

アメリカにおけるADHDの大発生(?)にはそのような背景があるというのです。

さて話は変わって、アメリカのアディクション治療施設では28日間や30日間のプログラムを組んでいるところがたくさんあります。これに対して日本の施設では入所期間が数ヶ月から、ときには数年にも及びます。これを比較してアメリカの施設は実力があり、日本はダメだ、と言う人もいます。しかし、この28日間というのも保険会社の支払いの都合でそうなっているだけで、施設側としては数ヶ月から数年やりたいという意向を持っているそうです。実際ドーン・ファームのような有名施設でも年単位でプログラムを組んでいるわけです。短けりゃ良いってもんじゃありません。

話を元に戻して、アメリカのようにADHDが優先診断になると社会性の障害が軽視されないか心配です(そのかわり服薬が促進されるメリットがあります)。一方、日本では服薬が忌避されているんじゃないかと心配になります。

参考リンク:
(10/24)新ADHDガイドライン、就学前児童と十代後半も診療対象に
http://health.nikkei.co.jp/hsn/index.aspx?id=MMHEb1000024102011


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10月27日(木)
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